第14話:ありがとう

 僕らは一旦森に戻って作戦を練ることにした。


「これからどうするかだね。」

「どうなってんすか、ホントに。」

「これはまったくの予想外だ。」

「めっちゃ面白そ!」


 顔を上げているのは僕とコンパスだけで、ライロックとアイレーは何もない土を見ながら考えている。


「トンカはこれからどうしたい?」


 コンパスが聞いてくる。なんでコンパスがこんなに冷静なのかがわからない。これも石波測定の結果から導き出された結果のうちなのかな。


「僕はもちろんこの先に行きたいよ。だって僕が知らないことがいっぱいあるんだから!」

「だって、ライロック。」


 コンパスはニヤケ顔でライロックに報告する。そのライロックは未だ下を向いている。目が球だと分かるほどに開き、息が荒くなっている。こんなライロックをみるのは初めてだ。


「ま、待て。いったん状況を整理しよう。ここはどこだ?」

「さあ。ただ私は未知の世界だってことは分かるよ。」


 コンパスが応える。


「なら、なぜ軍施設がある?西の大森林へ戻ってしまったと考えるほうが現実的じゃないか?」


 確かにそれのほうが可能性として考えられる。西、西の大森林を折り返してしまったと考えたほうがいいのかもしれない。


「私もそう考えたいけど多分、いや、確実に違うと思うよ。」


 ただ、そういう考えすらも否定しないといけないんだ。


「これを見てほしいんだけど。」


 するとコンパスは背負っているバッグを下ろして中から取っ手棒がついたポスト型の機械を出した。


「これは石波測定機なんだけど、ここに測定結果があるでしょ?実はこれって私が西の大森林に行く前に測定したとまったく同じなんだよね。しかも反応がさらに強くなっている。」


 コンパスが青い画面を僕らに向けながら淡々と説明をする。ライロックはまだ疑問が拭いきれないのか顔には困惑の表情が残っている。アイレーに関しては話についていけてないのか、それとも、頭がパンクしてしまったのかまったく動かなくなってしまった。


「だが、存在しない石波はもともと西の大森林の中にあった、それも軍施設の内側に。そこにちょうどよく着いてしまったということはないのか?」

「正直に言うと0.05%はあるよ。そのうちの0.04%はこの機械が壊れているっていう確率ね。この機械は方角も示せるの。もうこんなに強い反応が出てるのにまだたどり着けてない、軍施設のさらに向こう側に矢印が向いてる。」


 コンパスに完全に論破されてもライロックは困惑しているようだった。


「だが、」

「ライロック。」


 ライロックは疲れ果てていた。多分、頭もあんまり回っていない。考える力がほとんどないだろうけど必死に自分の考えを信じたいばかりにどうにか言葉を出そうとするライロックはいつもと違かった。

 僕が止めなきゃ。


「確かにここは西の大森林かもしれない、僕らは行った道をただ戻ってきたかもしれない。それも軍施設を見ただけでだよ。これだけのことで話し合うのはあんまりいいとは言えないよ。コンパスは証拠がある。申し訳ないけどライロックはこれしかないんだ。証拠がないのに話し合うのは裸で空を飛ぶことと一緒だよ。だから」


 友達だからこそ言うんだ。ライロックのために言うんだ。


「選択肢をつぶすことはやめよう。全てのことを想定しよう。そしてそこから考えられるあらゆることを考えて、結果を出して、また考えてを繰り返そう。それが僕たちのやりたいことでしょ?」


 正直、手がめっちゃ震えている。ライロックにこんなこと言うことなんて初めてだし、なんならこのセリフ恥ずかしい!

 コンパスはずっとニヤケ顔だし、アイレーは相変わらず動かないけど表情だけ動いている。めっちゃ驚いてる!ライロックに関しては僕の方をずっと見てるし状況がわからなくなったよ!


「だってさ、ライロック。」


 相変わらずのニヤケコンパスがライロックを動かそうとする。ライロックは一瞬ビクッとするもすぐに僕の方に向き直った。


「確かに、言うとおりだ。俺は考えを放棄してたみたいだ。だから、ありがとう。」


 簡潔だけど言いたいことはちゃんと言えてる、これこそライロック。


「トンカって意外と言うんだね。」

「え?」


 待って、あのセリフのこと言われたら嫌なんだけど!


「え?じゃないよ。だってライロックにありがとうって言わせるぐらいの名言だよ。かっこいいよ、ね、アイレー。」

「え、そ、そうっす。自分もちょっと意外だった。」

「でしょ?かっこよかったって!」

「うるさい!僕も今考えたら恥ずかしいのに!」


 久しぶりに笑った気がする。アイレーも、コンパスも、ライロックも、4人で笑うのってこんなに楽しいんだ。

 しばらく4人で笑った後、ライロックが口を開いた。


「そうだ、この後どうするかだ。」

「あ、忘れてた。私たちそのためにここまで引いてきたのに。」

「ここが俺らが入ってきた西の大森林の場所とはまったく違うと仮定しても、しなくてもやることはこの施設を抜けなければいけないんだ。」

「どうやって抜けるかだね。」


 コンパスとライロックは何をそこまで悩んでいるんだろう。抜け方はいくつでもあるけど最善の選択肢は決まってると思ってたんだけど。


「ねえ、トンカはどう思う?」


 ここは4人だけの空間、しかも僕は隊長だからね。しっかりと意見を言わないと。


「強行突破だよ。」




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