第13話:ハローー!!!

「もう……どれぐらい、歩いたんだろう。」


 光を遮るほどの密林地帯。暗闇から僕の問いかけに答える声がする。


「まだ、3日ぐらいだよ。」


 聞こえてきたのは女性の声。明るくよく通る声ではあるが疲れているのか単語の間に間が存在する。


「この先に休める場所はあるか?」


 暗闇からは僕と同じように疑問を持って進んでいる男性の声がした。


「ここまで来ると分からないっすね。自分にとっても未知の世界になるので。」


 その問いに対しては優しい声を持つ男性が答える。


 僕らがアイレーに出会った草原から出発してもう5日が経った。光がないので夜も昼の概念もないから本当に5日は分からないけれど。3日は僕にとってはとてもキツいもので足はすでに限界を超えている。それでも進めるのはこの先に待つ未知が僕を導いているからだと思う。

 ぼくらは当初、西の大森林の調査のためにここに来た。西の大森林には未知の生物がいてこの先には海がある。誰も知らない世界がある。そう思っていた。しかし、無知であったのは僕たちも同じだった。

 西の大森林で会ったアイレーは西の大森林のことをたくさん教えてくれた。そのことについていちいち深く議論していると終わりが見えなくなるから1つだけ僕らで可決された結論がある。それはこの先には海が無いということ。この先は本当に未知であるということだ。


「ここらへんで休もう。」


 ライロックの一声で皆が行進を止める。みんな、少しの息をつきながら静かに座っていく。


「疲れたーーーー。僕の足が本当に取れそうだよ。」

「はは、今日はもう終わりにするか。トンカもこんな感じだし。」


 その言葉に安心した僕は大きく息をついた。


「それにしても本当に変わらないな。こんなに進んでいるが知らない動物にすら会わない。意外と面白くないんだな。」

「そうだね。僕もこんなにつまらないとは思わなかったよ。ね、コンパスも。」

「いや、私はそうは思わないよ。」


 同調を求める行為に反する。こういう行為はチームの輪を乱すことがある。しかし今回は逆の効果を発揮した。


「アイレーには私がここに来た理由を離したよね。」

「あの謎の石波の話っすか?」

「うん。そのことなんだけど、これを見てみて。」


 そう言うとコンパスはバッグから青くスクリーンが光っている機械を出した。そして、ぼくらはそのスクリーンに向かって首を伸ばした。そこには青を背景に右上に白い文字で数字がたくさん並び、中央には白い大きな矢印が僕らの進行方向に向いていた。


「これは、石波を測る機械だよ。矢印は石波を受信した方向を指している。そしてこの機械は受信した大体の距離も表示してくれる。」


 ここまでの説明では僕らはうなずくことしかできなかった。


「そして本題に入るよ。矢印が私達の進行方向を指しているのは分かるよね。つまり私たちは石波に向かって歩いていたと言ってもいい。」

「でも、石波をどこで拾ったか分からないと意味がなくないか?」

「そう!だからこそこれは距離を表示してくれるんだ。」

「なるほど。どれぐらいだ?」

「私の計算では大体あと2日でつくよ。そして、私からの提案なんだけど。ねえ、トンカ。」

「?」


 僕は呼ばれるまま青いスクリーンに照らされているコンパスの隣に座った。


「もう正直あきらめようとしてない?たとえこの先に何があるか分からなくても体力の限界だと思うんだ。」

「…………。少しだけだよ…。」

「私の予測によると石波を受信したところは西の大森林の中でも特別な、もっと凄いところなんだよ。それはもう想像できないぐらいに。」

「……ほんと?」

「ほんとだよ。行ってみたいとは思わない?先に何があるか分からない暗闇を彷徨うよりも、漏れ出している少しだけの光を目指さない?だからさ、一緒に行かない?トンカ。」

「そ、そこまで言われたら……体が反応しちゃうじゃん!行くしかないよ!」

「よし、そしたら決定!皆いくよーーー!」


 コンパスの言葉に反応してしまった僕の体は教えられなくいつのまにか立っていた。コンパスはそれに応じるように隣に立ち僕の腕をつかんでいた。


「え、え!?いいんすか!?そんなので」

「まあ、アイレー。気持ちは分かる。だがこれはリーダーの意思だ。従うしかない。コンパスも上手くやったな。」

「うん、あんまり私の知性なめないでよ。アイレーはごめんね。」

「ま、まあ。行く当てないんで。自分はどこにでも行きますけど。」

「アイレーもなかなか素直だな。」


 ライロックはすこし笑いながらアイレーを見ていた。

 トンカは体がやばいと連呼していた。


「やばいよ。体が言う事聞かないって。いつもならこんなふうにならないのに。」

「疲れていたからかな。まあそういう事あるよね。」

「もう動きたくてたまらないよ!進みたい!もう行こう!コンパスが言う未知へ!!!」


 コンパスとライロックは待っていましたとばかりに荷物をすぐに背負い僕の後ろに立った。


「え!?もう行くんすか!?」

「まあ、仕方ないよね、リーダー命令だし。」

「ちょ、待って!まだ準備が……!あーーー!!」


 僕の足は止まらない。たとえどんな状況でも僕は進み続けるんだ!!



 それからというものは凄かった。僕がコンパスの言う方角にひたすら進むからライロック達は徐々に体力がなくなっていって休みたいときは毎回僕にお願いしていた。僕はまったく疲れていないけどみんなはとても疲れていたらしく座ったらなかなか動かなかったため。そんなことを1日と半分やっていたらコンパスが不意に声を上げた。


「トンカ!待って!」


 止まらない僕の足も流石にコンパスの声には応えた。


「もうそこで石波が受信したところだよ。」


 コンパスが指す方角を見ると密林で光がまったく入ってこない状況とはまったく違く、そこは光に溢れていた。その光が暗闇だとさらに強調されまるで天国にでもいるかのようだった。

 流石の僕らも黙って光の方に進んでいった。


「見て、これが私が言っていた光景だよ。西の大森林の先にはこれがあるんだ。」

「これで西の大森林の未知は終わりだね。」

「うん、そうだよ。でも、ここからもたくさん調査することがあるそうだ。」

「うん。ちょっと体が乗ってきた。」

「でも、これは最悪と言っていいね。正直私たちが見たいのはこんな光景じゃないから。」


 コンパスと話しているとすこし奥でアイレーが懐かしそうに声を上げた。

 ライロックも驚きのあまり声が出ないようだ。

 コンパスと僕も最初は同じような反応だったけどすぐに好奇心に体がのまれた。


 僕はすぐにメモ帳を取り出し書き綴った。


『西の大森林には軍施設が存在する。』





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