第12話:みんなでレッツゴー!!

「多分、この先に海は無いっすよ。」

「「「は?」」」


 アイレーから放たれたその言葉に3人は固まった。しばらくの間何も言えず口をただ開けているだけだった。トンカがまず動き出したときにはおそらく30秒は経っていただろう。


「う、海がない…………?」

「あ、ああ。」

「いや、地図では西の大森林の先には海があるって書いてあるんだぞ。」

「いや、自分も正確にはわからないっすけど。」

「なぜそう思った?」


 ライロックが少し強めの口調で聞いたのでアイレーは怖がりだしていた。


「自分結構前に海がある方角に歩いていったんすよ。俺もその時は海があるもんだと思ってて船さえ作れれば西の大森林から脱出できると思って向かいました。正確な時間はわからないすけど3日は歩いたっす。多分100キロはいきました。普通海の近くでは潮のせいで植物が枯れるんですけど西の大森林の木たちは行ってもいっても平然と立ってました。そしてさらに潮の匂いもまったくしないんすよ。それで自分は海はないんじゃないかと考えました。」

「なぜだ。アイレーが歩いたところがちょうど半島になってたっていうのか?」

「海がない……?いや、それはおかしいよ。」


 今まで海がないことにショックを受けてほとんど立っていただけのトンカが喋った。


「そしたら、なんでミンル大陸の西側では雪が降るの?あんなに大雪になるんだからそれに相当した水分量が欲しいはずだよ!風向はいつも西寄り。風が海上の水蒸気を運ぶからあんなに大雪になるんだよ!なのに海がないって、どういうこと…?」

「落ち着け、トンカ。」

「俺はよくわからないすよ!ただ、憶測を言っただけで。」

「ねぇ、アイレー。」


 コンパスがやっと口を開いた。今まで固まっていたのか思考していたのかはわからない。


「西の大森林に何年もいるんでしょ?それじゃあここで何回かは雪は降ったよね?」

「いや、まったく降ってないっすよ。」

「「「えっ!?」」」



 アイレーの衝撃発言により3人は一時お通夜モードに入ったがすぐに好奇心が心をくすぐり、西の大森林の先には何があるのか、なぜミンル大陸の西側では雪が降るのかといった議論が飛び交っていた。

 アイレーは完全に蚊帳の外であり少しうつむきながら理解はできないけれども話は聞いていた。

 少し議論が落ち着きコンパスが一時離脱した。コンパスがアイレーの方を見るとアイレーは明らかに気まずそうしていた。コンパスはそれがアイレーがこの議論に参加できないからだと思った。


「トンカ、ライロック。一旦落ち着いて。今ここに集まったのは今後の計画を練るためでしょ?未知への予想ではないはず。せっかくアイレーも加わったんだから2人だけの世界で争わないで。私やアイレーのことも考えてね。」


 コンパスにまったくの正論を言われ沸騰していた議論は一時冷めた。そしてトンカとライロックはアイレーの方を向いて謝罪を述べた。


「確かに今はその時間ではないな。申し訳ない。」

「僕もごめん。頭がいっぱいいっぱいになってた。」

「そんな謝らなくたって大丈夫すよ。自分が参加できないのも悪いんだし。お互い様ということにしましょう。」

「そうだな。コンパスもありがとう。」

「いえいえ。」


 場も落ち着いたところでライロックが真っ白な紙を机の上に広げた。


「これからなんだが、おそらく今までの地図は使えなくなるだろう。だからこれからは俺たちが地図を作ることになる。そしてこれはアイレーに任せようと思う。」

「え?なんですか?自分あんまり役に立たないっすよ。」

「アイレーは俺たちよりもはるかに長い時間ここにいた。そうならある程度ここらへんの地形はわかるだろう。さらに海賊狩りをやっていたんだろう?」

「まあ一応。暇つぶしみたいな感じっすけどね。」

「海を渡るには様々なことをみる必要がある。太陽だったり風光だったりだ。さらに航海図も見たり作ったりしたことあるだろう。それを見込んでアイレーに任せようと思った。」

「確かに航海図は作ったことあるっすけど。」

「トンカやコンパスもそれでいいだろう?」


 トンカとコンパスはアイレーの方を向きながら大きく首を縦に振った。


「できるか?」

「会ったばかりなのにそんなに言われちゃやるしかないっすよ。やります。任せてください!」

「頼むよ。」


 ライロックはアイレーに数枚の真っ白な紙と作図用具を渡した。


「そして、次の目的地なんだが。正直あてはないよな。」

「うん、まったくないよ!海もあるかすら分からないしね。」


 トンカは振り切ったように大きな声で言った。


「だから、もう、進むしかないんだ。未知へと。」


 その言葉を聞いたトンカは好奇心に体を支配され目が輝き、コンパスは若干苦い表情をしたがすぐに研究欲が湧き背筋が伸び、アイレーは先への不安からか目を細め体を小さくしていた。


「なにも分からない場所に行くんでしょ?ワクワクするよね!なんか1人で真っ暗な洞窟に潜ったときと同じ感じがするよ!あ、その時のメモがあって、」

「トンカ、今はやめよう。話し出すと止まらないからね。」

「変わらないな。その調子で行けば西の大森林なんてあっという間に制覇できそうだ。」

「ほんと!?任せて!」


 トンカは体を大きく見せるために大きく息を吸い込み胸を張った。それを見てコンパスはクスクスと笑った。


「まあ、お前らは大丈夫だよな。それで、」


 ライロックはアイレーに向き直る。


「アイレーはどうする?地図係を任せたが今やめても問題はない。」


 アイレーは少し不安そうな表情をしている。しかし小さかった体は大きく変わっており、心臓が大きく拍を打つので体が小刻みに揺れていた。一瞬下を向くもすぐに顔を上げた。その表情にはトンカと同じ物が見えた。


「俺もいきます!行かせてください!」


 大きな声で言うのでアイレーの体は少しばかり震えていた。

 トンカはあまりの声の大きさに少し驚くもすぐに表情を緩めた。


「もちろんだよ!!!」





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る