第11話:新計画
「ほら、トンカ起きて。」
「ん?」
暗闇から覚めると目と鼻とともに黒くて綺麗な髪が僕の首付近までたれていた。目を開けてまず髪が映り込み、その髪が僕の首を刺しに来ているように見え恐怖ですぐに飛び起きた。
「うわっ!!!」
「え!?どうしたの!?」
目が光に慣れ、聞き慣れた少し高い声が聞こえる方を見てみると黒の長袖長ズボンを着て片手にクシを持っているコンパスが座っていた。
「あ、。コンパスか。」
「え、どういうこと!?そんなに驚くかな!?」
「あ、ごめん。最近見た悪夢の延長かなって。」
「え!?これって悪口じゃない!?ちょっとライロック!!聞いたーー?」
コンパスの呼びかけに応じたライロックがテントの入り口からネッと顔を出してきた。
「まあ、トンカはそんなもんだ。寝起きには気をつけろ。何をするか分からないからな。」
「え、僕そんな寝起き悪いの?」
「気づかないほうがよかったな。」
そう言うライロックは顔を引っ込めた。
「あはは、まあ気にしなくていいよ。」
コンパスはそう言ってくれるけど僕は正直すこしショックだった。だって友達に警戒されてるのって嫌じゃん。そしてライロックがそのことを僕に言ってくれないこともショック!
「ちょっとライロックってあーゆーとこあるよね。僕が最初の頃にあった時はもっと優しかったのに!」
「まあまあ。今ライロックが外で朝ごはん作ってくれてるからそれで仲直りしてよ。」
「えっ!?ほんと!?ライロックって本当にいいやつだよね!!待っててー僕の朝ごはん!」
口と足が勝手に動いてテントの外に出る。次に目が勝手に動きライロックを探す。見つけると足が自動追尾を始めてライロックの下へ走り出す。僕の頭はわざと制御をせずに各々に任せる。
ライロックに近づくにつれ嗅覚が作動・感知しさらに足が速くなる。全神経が上半身と筋肉に集中している今、裸足で土の上を走るも感触は感じない。視覚がライロックの姿を鮮明に捉えることができた。しかし直後、急に視線がライロックから照準を外したので脳は困惑。集めていた神経を全身に張り巡らせると右足になにかが当たったことを確認。すぐに視線がそちらに照準を合わせるとすこし大きな石であったことが分かった。
ドテッ
僕の体が地面に打った鈍い音と土が僕の体を避けようと飛び散る音が聞こえ左足の膝が痛み始めた。
「は?」
ライロックの困惑とあきれたような声が聞こえる。
「えっ!?」
後ろからはテントから出たばかりのコンパスが驚きの声をあげる。
「な、ナイス……トライ。」
その二人に挟まれ、僕は右手でグッドポーズをして自分への励ましの言葉を言った。
「で、これからだけど。」
3人がテントの中で向かい合うように座りライロックが作ってくれたパンと牛肉を挟んだサンドウィッチを食べていた。
「私たちはあの人と一緒に旅に出るんだけど、さ。正直やりづらくなったよね…。」
「まあ、そうだな。目的も分からないやつと一緒に行くんだから。」
「僕がいるから大丈夫だよ。」
「てか、私あんまり信用してないんだよね。海賊狩りをしていた人の一人称が『私』だなんて。」
「多分敬語だろうな。一緒に旅するんだから普通に喋ってもらうか。俺も完全に信用しているわけではないし。まあ、このことは後で合流してから話そう。」
「僕はあの人、いい人だと思うよ。」
「てか、女の子がよかったー。男3、女1で旅するとかどっかのエロ漫画だよ。」
「……コンパスお前、俺らを男として接してたのか。俺は仕方ないとしてもトンカはダメだろ。」
「え、ショタコン?」
「は!?違うしーーー!。そんな意味で使ったんじゃないの!ただ女友達が欲しいってことを強調したいだけ!!ね!」
「「あ、分かったよ。」」
「二人してはもんないでよ!あと私、男に興味ないから!!わかった!?」
「そうか。そろそろ出るか。日もいい感じに上がってきたしな。」
「うん!そうだね!荷物まとめてくるよ!」
「あぁ、じゃあ私も…。」
「「…………………」」
「ちょっ、無視しないでくれない!?!?」
「確か、あっちの方角だったはず。」
「コンパス、ちょっと右。」
「う、うん。」
今は昨日会った人の家に向かっている。移動時は一応警戒してコンパスだけ前に配置している。
昨日の人の家は意外に遠く少し歩かなければいけなかった。つまりそれほどこの開けた土地は広いということになる。
「あ、なんか見えてきたよ。あれじゃない?」
コンパスが指を差した方を見ると草原の中央あたりに木でできた小さな家があった。
「思ったよりも立派だな。」
窓はないものの扉はしっかりとついており壁も少し汚れがあるだけで耐久性は問題なさそうに見える。
3人で入り口まで歩きドアの前に着くとライロックがノックをした。
扉は少し経ってから開き、昨日と同じ服を着て立っていた。
「ようこそ。どうぞ入ってください。」
「おじゃまします。」
中に入ると中央に小さな机が1つ、壁際にはベットが置いてあるだけの質素であった。
「すみませんね、少し狭くて。」
そう言うとベットに僕たちを座らせた。行く道中でライロックが話をすることに決めた。
「いえいえ、お構いなく。おれらと一緒に来る覚悟はできました?」
「はい、もちろん。いつまでも私が作ったこの家にいても良いのですが先に進まなければ何も起きませんからね。」
「わかりました。それでは改めて自己紹介しましょう。俺がライロックという名前で、こっちのちっちゃいのがトンカ、そしてコンパスです。」
「ありがとうございます。では、私の名前はアイレーと申します。細かいことは昨日述べた通りです。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。自己紹介も終わったし、もう計画も立てちゃうか。と、その前に。」
ライロックが一旦言葉を切る。そしてアイレーを見つめる。
「アイレーさん、俺らはこれから一緒に旅をすることになります。だからタメ語で話しませんか?その方がお互いに変な気を使わなくていいと思うので。」
アイレーは想定外の言葉だったのか少し困惑するもすぐに元の調子を取り戻した。
「そうですよね。そうしましょう!自分もそうしたいと思ってました!」
アイレーの顔は明るくなり今までは少し不気味な雰囲気を放っていたが今ではほとんど感じられなくなった。
「それはよかった。これで話をスムーズに進められる。」
「それはごめんなさい。ここで人と会うのは初めてで少し警戒していたもんで。改めてよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。」
「うん、よろしく!」
僕はアイレーの陽気な雰囲気に包まれて、言葉は一言二言しか話していないけれどアイレーは昔からの親友のように思えた。でも、コンパスは態度の急変で少し引いてて小さな声でよろしくと言った。
「それで今後の計画だが、何も考えてない。だから改めてここで練る。」
「昨日聞いた限りでは、当初の計画は西の大森林に入って研究やら何かをするだけすよね?」
「ああ、そのとおり。コンパスは研究のために来てトンカは西の大森林をみたくてここに来た。だか、トンカは最近この先にある海に興味を持ったみたいで海の話しかしない。」
「海?」
「うん!この大森林の先にある海って気候の面から見て北・東・南で暮らしていない生物もいると思うんだ。だから行きたいなって。」
「こういう理由らしい。コンパスとアイレーはどう思う?」
「私はいいよ。ここでやりたいことはやり終えたし。」
「海………か。」
アイレーは少し険しい表情で自分の顎に手を当てた。
「?どうした?」
「いや、見なきゃわからないことだから何とも言えないすけど。」
アイレーは手を顎から離しゆっくりとトンカを見た。
「多分、この先に海は無いっすよ。」
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