第10話:もう一つ!!
「コンパス!!コンパス!!」
「・・・・・・あ、」
体を荒れた海のように揺らされ条件反射的に目を開けると視界が真っ白になり直後に空にある太陽のせいだと気づいた。
「う・・・」
「ねえ、ここどこ?」
体が金縛りにあったように動かず、寝たまま頭を動かすと木のように生えている草がまず目に入った。さらによく見るとその木を這い上がる黒い豆粒のようなものが列をなして行進していた。
「ここは・・・森?」
「多分コンパスが横になっているからそう見えるだけだよ、ほら。」
トンカが空から手を差し伸べてきたのでコンパスは唯一動く右手を上げて掴まった。
「いくよー、・・・・・・て自分で動いてよ。」
「あ、うん。ごめん。」
「ほら、せーーの。」
どうにか地面に根っこをはったような体を引き剥がしてトンカの手を頼りに上半身を起こした。
「え、」
周りを見るとさっき森だと思ったのはただの草原で周りには木がほとんどない。小動物も少しいるぐらいで特に特徴もない場所である。
「ねえ、なんでここにいるの?」
「あ…、…………。思い…出した。」
「僕がねてる間に何があったの?」
抑えろ、感情を。私は今ここで一番冷静でなければいけない。こんなところで患者に任せたらトンカも興奮しちゃってさらに危険をさらすだけだ。落ち着け、落ち着け。
「あのね、トンカ……」
「え、ほ、んとう?」
「うん、私はその後は何もわからないけど結果は良くないと思う。」
「………」
さすがのトンカでも悲しいか。そうだよね。こんなことなことこの年で経験するようなことじゃないよね。慰めるのも私の仕事。
「……?トンカ、悲しくないの?」
「悲しいよ、それはもちろん。」
「いいんだよ、感情を出して。私だって心は締め付けられそうに苦しいんだから。」
「でも、ライロックがいなくなったのかはわからないじゃん。」
「そうかもしれないけど、可能性は」
「あと、その言い方は僕のこと子供扱いしてるよね。これでも大人並みの知能は持ってるよ!そして大人にもないものを、これは子供特有だけどね。」
「?」
「希望だよ!行こう!ライロックが待ってるかもしれないから!」
立ち上がったトンカは顔に感情は浮かべていないが目にははっきり出ていた。私が今まで見た中で一番明るい目だと思う。
私が昨日襲われた大雑把な方向を教えるとトンカはわざと大きな歩調で進み、私はそれに続いた。大きいと言っても身長が小さいから私は容易についていける。でも私はとてつもなく大きく感じた。この時はいくら速く歩いても追いつかなかった。トンカが単に速いだけじゃく、私自身が前に行かないようにわざとしているようにも思えた。とても不思議だ。とても奇怪だ。面白い。私は享楽を感じながら年齢の知らない彼についていった。
「あ、ここらへん。」
あの時は暗くてほとんど周りをみていなかったはずだがなぜか直感的にわかった。足元をよく見ると人が倒れたような形に草が倒れている。
「……た、多分ここらへんでライロックは捕まったと思うけど……。」
「あ、コンパスみて。多分コンパスとライロックが逃げたかもしれない足跡の上に逆方向に向かってる跡があるよ。」
「本当だ。てことはライロックと"何か"は一緒にに歩いたってことか。」
「うん!もしかしたら仲良くなってるかもよ!」
「本当に……。行こう!」
今度もトンカを先頭に足跡をたどっていった。私たちが逃げた道をそのままたどったらしく足跡がそれることはなかった。しかし念のためにトンカとは本当にこの足跡はライロックなのかを確認しながら歩いた。
「あ、テントだよ!テントにそのままつながっている!」
「本当だ。まさかこんなことって」
「ライロックまってて!」
そう言うとトンカはテントに向かって走り出した。中の状況がまったくわからないがトンカはそんなことお構いなく突っ込んでいく。
「あ、待って!!」
トンカが先に入口に突っ込む。その直後にテントが吹き飛ぶぐらいの叫び声が聞こえた。
「え!ちょっと!!」
コンパスは中の様子を警戒し、地面に落ちていた石を拾って万が一のときに対応できるようにした。なるべく素早く入ろうと入り口に突っ込むと弾力性があるものにつまづき頭から転んだ。横になりながらすぐに後ろを見ると、泣きながら横になっているトンカとそれに少し困ったような目で見るライロックが座っていた。
「あっ!!!!!!!」
咄嗟に出た声で私にはほとんど聞こえなかったがおそらくこの声は草原中に響いていたと思う。
「本当にうるさいな、ふたりとも。」
珍しく笑いながらそう言ってきた。
「ライロック!生きてたんだね!!」
「当たり前だろ。それよりもトンカをどうにか……って、なんでコンパスもちょっと泣いてんだよ。」
「しかたないだろ、昨日あんなに走ったら汗ぐらいでるよ。」
「ああ、そうか。というかトンカは寝たんだな。昨日もあんなに寝たのに。」
「今回はトンカがお手柄だったよ。トンカがいなきゃ私は1人で旅をしていたよ。」
「それはよかった。そうだ、正面を見てみろ。」
「正面?」
寝ながらライロックに向けていた頭を、顎を地面につけて前を見てみるとそこには、片膝を立てて座っていて黒い帽子に黒い服、ズボン、靴を着て白い紙は肩まで垂れている少し黒ずんだ男がいた。
私は横になっていた体をすぐに立ちの姿勢に戻した。
「ライロック、この人は?」
「俺よりも本人に聞け。」
「はじめまして。きみは昨日一緒にいた女の子か。」
声は低く説得力があるように喋った。
「昨日ってことはあなたが。」
「はい。昨日はすみません。私が追いかけてしまったばかりに。敵意はありませんでした。」
「わかりました、おそらく今ライロックがいるのが証拠でしょう。しかし、何故昨日は声を声をかけなかったのです?その方がお互い悪いことにはならなかったと思いますが。」
「それはすみません。私もすこし慌ててて。」
「なるほど。しかしまだわからないことがたくさんあります。すこし質問しても?」
「問題ないですがこのような経緯になってしまった理由を話します。そしたら分からないことを解決するかもしれない。まあ、楽にして聞いてください。」
「…わかりました。」
「まず私はミンル大陸の南海岸沿いにある村で生まれました。そこは本当に何もなかったので村に名前もついていません。しかし村人たちは誇りある生まれ故郷である村をリエという名称で呼びました。そこで私は18まで魚釣りや仲間たちと海賊狩りなどをしていました。しかし18という年齢はどうしてもヤンチャをしてしまう時期です。そこで私は仲間とともに西の大森林へ入ってみようと考えました。しかしいざ入ってみようとしても仲間は軍に捕らえられ私だけが逃げることができました。逃げた直後は何度も西の大森林からは出ようと考えましたが仲間を見捨てて逃げた私に仲間は何かしらの報復をするのではないかも考え村には戻りませんでした。そして西の大森林を彷徨っているとちょうどこの草原を見つけました。ここなら安心して過ごせると思いこのテントからすこし離れた場所に簡易的な家を立て暮らしました。多分暮らし始めてもう5年は経ったと思います。私は昼間は森に入って食材をとり、日が暮れたら家に帰るという暮らしをしていました。西の大森林に行くときには色々な物をバッグに入れてきましたがもう中身は服とナイフとランタンぐらいしかありません。そしていつもの通り森で食材を取り家に帰ろうとするとこのテントを見つけました。昨日までは無くいきなり現れたもんですからもうとてもびっくりしましたよ。もしかしたら人がいるんじゃないかと思いすぐに家に食材を置いてきてバッグからランタンを取り出しテントに近づきました。すると中から人が出てきて驚くと同時にとてつもない安心感を感じました。しかし友好関係になるうと近づくとその人はとても怖い目で私を見てくるのでとても言葉が出ずに昨日のようになってしまいました。と、ここまでが昨日までの大雑把な出来事です。話は苦手で分かりづらいこともあると思います、何か質問はありますか?」
「あ、うん。ありがとうございます。私が抱えていた質問は全て払拭しきりました。」
「それはよかった。それで頼みがあるんですが。どうか私をあなたたちの仲間に入れてほしいです。あなたたちの目的はライロックさんからはもつ聞きました。」
「!?いきなりだね。でも申し訳ないですが私はあなたを完全に信用はしていません。ライロックは?」
「俺はこの人と一晩明かしたけど悪い人には見えなかったな。仲間でもいいと思う。」
「で、でも。」
「まあ、うちのリーダーはトンカだ。トンカに決めてもらおう。」
「分かった。」
私は正直あまり信用していない。いきなり現れて仲間になろうだなんて。でも、話を聞く限り西の大森林での経験も豊富そうではある。その点でみれば仲間にするメリットはあるのか。
「トンカはどう思う?」
「ん、あ。ごめん、寝てて最後しか聞いてなかった。仲間になりたいの?いいよ!全然!大歓迎!!」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!あ、でもまだ全員からは理解が得られていないので…。」
「大丈夫!時間が全てを解決するよ!ね、コンパス!」
「うん。そうかもね。私がまだこの人を理解できてないかもしれないから。やりづらいとは思いますがよろしくお願いします。」
「はい!」
まあ、今後のことも考えたら良い選択なのかもしれない。様子をみるしかないか。
「あ、仲間に入れてもらったんですが今日は家にいてもいいですか?5年も住んでいたら愛著が湧いちゃって。」
「もちろん!」
「ありがとうございます!では今日は失礼します。」
そう言い残しテントから出ていった。
「よーし、新しい人が加わったね!」
「そうだな。でもコンパスはまだ納得してないかもしれないが。」
「私は少し臆病な性格だからね。一緒にいたらいつのまにか仲良くなってるよ。」
「うん!そうだね!」
「そういえば今日はなにする?まだ1日は残ってるけど。私は少し測定したいものがあるんだよね。」
「んじゃ、ぼくらはお散歩いこ!」
「ああ、もちろんだ。」
「んじゃ、私そこら辺にいるから何かあったら呼んでね。ばいばーい。」
テントの入り口を抜け昨日の昼間に決めた測定場所に向かった。
私は臆病だ。だからこそトンカのように希望を持って、人を信用することができない。気づいていたけどこれが私だからと言い聞かせて直してこなかった。でも少しはトンカを見習ったほうが良いかもね。そしたら明日が楽しくなるかも。未来を明るく見れるかもしれない。
希望は生まれるものじゃなくて自分が生み出すものだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます