第7話:強行突破
僕達が暮らしているミンル大陸の東西には海岸線に沿うように大森林が形成されている。その大森林は何十メートルという高さを持つ木で構成されており、入ることはできるものの出てくることは決してできないというファンタジーのような世界を持っている。
西の大森林は東の大森林と異なり軍施設で囲まれている。そのため東の大森林よりも入ることは困難であり、不法侵入であるとすれば大きな罪に値することになるだろう。しかし、そんな危険をも冒してまでも己の好奇心を満たそうとするものは必ず現れる。今までに何十、何百いたであろうしこれからもさらに現れるだろう。今、僕達はそんなグループの仲間入りを自ら望んでここに来た。
なかなか背が高くたまに毒を言うがクールで頼りになるライロック。学生であり電気系の研究者でもあり、何を考えているのかわからないコンパス。西の大森林には入らないものの侵入の協力をしてくれているコンパスの友達のカラマ。ミンル大陸を全て回り好奇心のままライロックとコンパス、カラマを巻き込んだ僕、トンカ。
「トンカはこの柵を越えられるようになった?」
コンパスが聞いた。
西の大森林は軍施設で囲まれており、さらにその周りを3メートル程の壁で囲まれている。壁はところどころ凹凸がありうまく手や足を引っ掛ければ簡単に登れそうである。しかし身長が低く体力もそこまでなかったトンカは登れそうにないと心配されていた。
「大丈夫。カメラに特訓してもらったからね。後は自分を信じて行くしかない!」
「いいね!それじゃあどっちが早く登れるか勝負する?」
「もちろん!」
「もう皆準備はできたかしら?ライロックは?」
「俺も大丈夫だ。」
「それじゃあメギを無効化するわね。」
軍施設を囲む壁には監視カメラが付いている。この監視カメラはメギという物質で映像を共有しているらしい。
「あの丸い機械を使うの?」
「そうよ。コンパスと改良してもう丸くはないけどね。」
そう言いカメラはズボンのポケットから小さな四角いものをだした。
「さあ、トンカとライロックこれをみなさい!私とカマラが改良すれば国家レベルにも影響を及ぼすようになる。」
「つまり……?」
「もともとの機械は半径1キロのメギを無効化するだけだったの。それでも広いけどね。でも、さらに改良を加えるとこの大陸をそっくり覆う範囲で無効化できるようになった。」
「大丈夫かそれ?戦略兵器とかにもなるだろ。」
「大丈夫!私たちはこれぐらいのものはいっぱい持っているから!」
「いや、そうゆう問題じゃなくて……。」
「え!なに!?かっこいい!!戦略兵器…!!?」
「かっこいいてしょ、トンカ。」
「うん!!」
トンカが目を光らせてしまったせいでコンパスが調子に乗り始めた。夜に軍施設の近くで騒ぐとなるとめんどくさいことになると感じたカラマはすぐにこの熱に水をかけた。
「さあ、やるわよ。詳しいことは大森林の中で話してちょうだい。」
「あ、ごめん。」
「謝らなくてもいいわよ。さあそろそろ始めるわよ。準備して。」
僕らは監視カメラにギリギリ気づかれない位置まで近づいた。
「無効化できる時間は長くて2,3分。3メートルを昇るには十分な時間よ。後1分後に始めるわ。」
どこか登りやすいポイントはないかと、広がった瞳孔で探し始めるとライロックが話しかける。
「本当に大丈夫なのか?もう家には帰れないかもしれない。」
「大丈夫、悔いはないよ。親なんてずっといなかったし。でも、最後は温かいものが食べたいよね。」
「……そうか。それは両親の手作りまでとっておけ。」
ライロックは家庭で何があったのかは分からないけど、知り合ったときから独り立ちをしたいと言っていた。そんなことだから自分や他人の家族についてしゃべることはほとんどなかったけれど今回は少しだけ話してくれた。これが僕と両親のどちらに同情してなのかは分からないけれど。
「後、10秒!」
動物も空気すらも寝ているのか風すらおきない。僕史上一番静かな時間だったと言ってもいいぐらいだった。カマラがとても小さな声でしゃべっていてもこの空間が声を増幅させる。
「9,8」
秒読みが始まった。既に見えているのは3メートル程の壁だけで暗闇を忘れるほどにはっきりとしている。この壁を登るためだけにカマラに特訓をしてもらった。頭の中をみていた目で再び前をみると3メートルしかない壁が見える。
「2,1」
これを超えれば新たなメモが書ける。それはしょうもないことかもしれない。つまらないことかもしれない。それでも心の中は好奇心で満たされている。なぜなら向こうには新しい世界が広がっているから。
「0!」
新しい物語がつくられているから。
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