第6話「解き放たれた意志」
地下のサーバールームは、まるで巨大な生き物の内臓を覗き込んだような光景だった。無数のラックがずらりと並び、その間を複雑に這うケーブルと配管、重低音のように響くファンの回転音――。普通のオフィスや研究室にあるサーバーとは桁違いのスケールだ。きっと、軍事レベルの機密や国単位の依頼を受けた高度な研究が進められていたのだろう。
「……こりゃ、凄いな」
勝峰(かつみね)岳志は、薄暗い照明のもとでラック群を見上げる。ときおり赤や青のランプが点滅し、その光が壁や天井に不気味な影を投げかけていた。研究スタッフたちも皆、呆然とした表情で目を彷徨(さまよ)わせている。こんな巨大なシステムが災害や爆発を耐え、まだ稼働しているのか――その事実自体が、どこか現実離れしていた。
一方、桜来(さくらい)凛花(りんか)はサーバーラックの端末パネルを懐中電灯で照らし、アクセスを試みる。だが、当然のようにIDが弾かれ、“権限不足”のエラーが出るばかりだ。
「さっきアルマが繋いでくれたルートが、ここのどこかにあるはずなんだけど……。まさかこれ全部がメインサーバーってわけじゃないわよね。いくつものサブが並列に動いてるっぽい」
凛花が苦い表情を浮かべながら手当たり次第にパネルを叩いてみるが、反応は薄い。どうも通常のオペレーションルームから遠隔制御する前提で作られているのか、手動でいじることは想定していないようだ。
「……この研究施設自体、たぶん“アコア開発の最先端”という看板を掲げていたのが表向きで、実際には軍事案件を含むトップシークレットの実験を請け負っていたのかもな。そりゃ強固なセキュリティで固めるわけだ」
勝峰が頭を振りながら言う。彼は大手企業のメンテスタッフとはいえ、ここまで大掛かりな機密を見るのは初めてだろう。
振り向くと、そこでアルマを抱えた高峯理久(たかみね・りく)が壁に寄り掛かるようにして座りこんでいるのが見えた。アルマは相変わらず意識がはっきりせず、かすかに瞼を閉じたり開いたりを繰り返している。通信ポートからは先ほどのケーブルを外したばかりだが、精神的・物理的に限界ぎりぎりだ。
「アルマ……大丈夫か」
理久がそう声をかけ、彼女の頬に触れる。するとアルマは弱々しく顔を上げる。その瞳は光を失いかけながらも、どこか何かを訴えているようだった。
「ボク……ここを見たことが、あるような……気がするんです……」
幼い声。だが、その言葉は場にいた全員の耳を奪った。アルマが“記憶”を掘り起こそうとしているのかもしれない。前のマスターや、ここで行われていた研究との関係を――。
凛花がぱっと顔を上げる。「アルマ、何か思い出せる? このサーバーに関係してるの? あなたは……ここで作られたの?」
問い詰めるというよりは焦燥に駆られた声音だ。アルマには、何らかの軍事的意図を含む特殊な機能が搭載されている可能性が高い。ならば、ここのサーバーにはその“鍵”が眠っているかもしれない。
しかし、アルマはうつむいたまま唇を噛む。微かな震えが肩から伝わり、理久がそっと彼女の背中を支えた。
「……わかりません。何も……ちゃんと思い出せない。ボクのマスターが何をしていたのか、どうしてボクを連れていたのか……。ただ、ここに来たことがある気がして……変な痛みを感じるんです……」
語尾がかすれる。まるで人間がトラウマに触れたときのような反応だ。機械の“記憶領域”が混乱しているのか、それとも人間的な心がショックを受けているのか。両方かもしれない。
理久はアルマの頭をそっと撫でる。アコアに対してこんな行為をするなど、数時間前の自分では考えられなかった。それでもいまは、彼女の孤独を少しでも癒やしたいという思いが勝る。
「思い出せないなら、無理に思い出さなくていい。俺たちが見つけるから。前のマスターや、ここで何が行われていたかを。……お前が傷つかない方法を、一緒に考えるから」
その言葉にアルマは、わずかに表情を柔らかくした気がした。勝峰と凛花、それに研究スタッフたちも少し気まずそうに視線を交わす。いまさらアコアの心を慮(おもんぱか)かる余裕などなかったはずだが、こうしてアルマを見つめていると、単なる“機械”だと割り切ることが難しくなる。
「……それで、どうする? アルマはもう限界だろう。このままじゃ、ここに来ただけで終わっちまう」
勝峰が部屋の中央にあったコンソールを蹴とばすようにして苦々しい顔をする。サーバーラックは一見動いているようだが、実際にどう操作すれば施設のメイン制御を奪い返せるのか、まったく皆目見当がつかない。
凛花は唇を引き結んだまま、ラックの1台1台を見て回り、タブレットをかざす。だが、やはり権限が弾かれ、ログイン画面すらまともに開けない。「コーディネート」に対する法的規制がこんな場所でも生きているのか、単に物理的に遮断されているのか――どちらにせよ状況は最悪だ。
そのとき、研究スタッフの一人が何気なくラックの裏側を覗き込んで青ざめた声を上げた。
「こ、これ……人間が使った痕跡があるけど……。ケーブルが切断されてるのを無理やり繋ぎ直してる……? しかも、使った形跡はそんなに古くない。誰かが最近ここで作業したのか?」
全員がそちらに駆け寄り、ライトを当てる。確かに数本のケーブルがテープ留めされるような乱雑な状態になっており、プロの技とは思えない荒っぽい処理跡がある。つい先ほどまで何者かがここで何らかの実験を行っていたようにも見える。
「おいおい、まさか火災や爆発の原因が、この改造作業にあるとかじゃないだろうな? もし無理な接続をしてショートでも起こしたら……」
勝峰の推測に、凛花も顔を強張らせる。施設全体が非常事態に陥ったのも、もしかすると何者かの違法な改造やハッキングによるものかもしれない。
「ってことは、その“何者か”がまだ施設内にいる可能性もある。外へのルートが封鎖されてる以上、私たちと同じように閉じ込められているはず……」
ざわり、と場の空気が波立つ。研究スタッフたちが不安げに顔を見合わせる。先ほど廊下で警備ロボらしきものが暴走していたのも、もしやその“何者か”が手を加えていたのでは……と考えると、背筋が凍る。
「いずれにせよ、このまま待っていても埒(らち)があかない。アルマを休ませたいところだが……まずはサーバーをどうにかして人間の手に取り戻さなきゃ、火災も封鎖も止められない」
勝峰が決断を迫るように声を上げる。しかし皆、具体的にどうすればいいのか分からず、沈黙が落ちる。
そこで凛花が急に足を踏み鳴らし、何かを思い出したように目を見開いた。
「……そういえば、上階でアコアの格納カプセルを見たとき、“管理者レベル”の認証端末があるって話を聞いたのを思い出したわ。管理者レベルのIDを持っていれば、ここにもログインできる可能性があるんじゃない? もちろん、その“管理者”本人が使うものだけど……」
「管理者レベル……そんなID、今さらどこで手に入れるんだ?」
勝峰が唸ると、凛花は少し困ったように表情を曇らせる。
「本来はマスターの生体認証や特別なアクセスカードが必要なんだけど、もし前のマスターが自分のIDを“隠し置き”してたとしたら……あるいは、さっきの怪しい“誰か”が奪ってるかもしれないわね」
そう言って皆がまた暗い顔をする。状況をひっくり返すには、いずれにしても“それ”を見つけるしかなさそうだ。たとえアルマが高性能でも、すべてをこじ開けるには限界がある。
「いまさら上階に戻るのは難しくないか? 火災や封鎖で通路も危険だし、警備ロボがうろついてるかもしれない」
理久が言うと、勝峰は複雑そうに腕を組む。確かに、地下まで逃げてきたのに、また戻っていくのはリスクが大きい。
しかし、一人の研究スタッフが小声で口を開いた。
「……実はこのサーバールームの奥に、上層部への“試験搬送用エレベーター”があるって聞いたことがあります。ふだんは物資輸送や緊急時の実験サンプル移動にしか使われないから、あまり一般には知られてないんですが……」
皆が一斉にそちらを振り向く。凛花と勝峰は顔を見合わせ、「なるほど、それがあれば火災や廊下封鎖を迂回できるかもしれない」と口を揃える。
「ただ、たぶんそのエレベーターを起動するにも管理者レベルの認証が要る可能性が高いわね。……いや、あるいはアルマがまた頑張ってくれれば、非常用モードで動かせるのかも」
凛花がちらりとアルマを見やる。アルマはすでに意識が朦朧(もうろう)としているようで、理久の胸に身をあずけ、弱々しく呼吸を繰り返している。ここでさらに大仕事をさせるとなると、相当の覚悟が必要だ。
「俺たちもできるだけ何か手を打ってやれないのか……? アルマの負担ばかりじゃかわいそうだろう」
理久の苛立ちまじりの問いかけに、凛花は悔しそうに首を振る。
「そのために管理者IDを手に入れたいわけよ。でも、こんな緊急事態だと、上層部の人間がどこにいるか分からないし……ひょっとして既に逃げたか、死んでるかもしれない」
「そうだな……。外へ脱出するルートがすべて閉ざされている以上、見つけたとしても生きている保証はない」
勝峰も暗い声で続ける。研究スタッフたちの中には既に絶望して座り込んでしまう者もいた。せっかくここまで来たのに、サーバーを制御できないまま詰んでしまうのか。
だが、そのとき奇妙な物音がした。かすれた電子音のようなものが、サーバールームの奥から聞こえる。ピッ、ピッ、というリズムを刻みながら、何かが作動しているらしい。
「なんだ? まだどこかに装置が動いてるのか?」
勝峰がスタッフたちに合図し、警戒態勢で奥へ進む。ラックの密集地帯を抜けると、小さなモニターが埋め込まれたパネルが壁に取り付けられていた。さきほどの電子音は、そこから鳴っているようだ。
「こいつ……緊急モードの通信装置か何かか? メイン画面は真っ黒だけど、エラーコードみたいなのが点滅してる」
凛花がタブレットを重ね合わせ、試しにシステムの応答を確認する。が、やはり暗号化されたプロトコルが返されるだけで、素人に解読できるような代物ではない。
「アルマ、もう一度だけ……悪いけど、少しだけ力を貸してくれない? これは長時間のハッキングじゃなくて、“何が動いてるのか”を見るだけでいい。中身が分かれば、あるいは突破口になるかもしれない」
凛花が半ば祈るように声をかけると、理久の腕の中にいたアルマがゆっくりと目を開いた。見るからに青白い顔。人工皮膚の下でどんな処理が行われているのかは分からないが、彼女が極限状態にあるのは明らかだ。
「……分かり、ました。ボクが、見ます……」
小さな声でそう答えると、アルマは震える指先をパネルに触れさせる。わずかな電流が走り、ピッ、ピッ、と規則的な音が幾度か重なりあった。
すると、すぐにパネル上に文字化けしたログらしきものが走り始める。凛花がタブレット経由でそれを記録していくが、さっぱり解読できない。英数字や記号がひしめき合い、まるで暗号文のようだ。
「やっぱりダメなのか……?」
勝峰が首をかしげる瞬間、アルマが唐突に声を上げた。かすれた声だが、はっきりとした口調である。
「この通信装置……外の端末と連携してます。……誰かが、外部から“接続”を試みようとしている。だけど遮断されていて、そこにエラーコードが……」
「外部からだって……? 救助隊か、それとも……」
理久が動揺を隠せずに問うが、アルマは目を閉じたまま首を振る。
「分からない。認証キーが“政府系”でも“軍”でもない。多分……民間か、あるいは個人レベル。……でも、施設の封鎖を解こうとしてるのは確かみたい。何度もアクセスを送って、セキュリティと戦ってる……」
外部からのアクセス。ということは、この施設を封鎖しているセキュリティを強行突破しようとしている人間がどこかにいるのか? 助けの手を差し伸べようとしているのか、それとも施設の機密情報を狙う敵なのか、定かではない。
「とにかく、そいつが封鎖を解いてくれりゃ助かるが……。あるいは、内外から協力してセキュリティを壊せるかもしれないな」
勝峰の言葉に、凛花は希望を垣間見たように顔を上げる。「待って、アルマが内部からセキュリティの一部を開けて、外部の“誰か”が外からも鍵をこじ開ければ……二方向から攻める形になるわね。いわゆる同時ハッキング。どっちか一方じゃダメでも、二つの攻撃が噛み合えば突破可能かも」
問題は、それを実行するのがアルマであるという点だ。彼女は既に体力も心も限界に近い。その上、外部の正体不明のハッカー(?)が本当に味方と言えるのかどうかも分からない。今は藁にもすがる思いだが、もし突破後に“何者か”が施設の機密を奪取したり、アルマを強奪する目的でアクセスしているのだとしたら……。
「危険だ……。分かってるけど、やるしかないんだろう?」
理久が苦い顔をしながら呟くと、凛花も唇を噛んだ。もし二方向からのハッキングが成功すれば、メインゲートが開き、火災対策なども正常に戻せるかもしれない。でも、それは“情報”をすべてさらけ出す危険を伴う。
そのとき、アルマがふいに理久の胸元を掴んだ。必死に何かを訴えるような目で見上げてくる。
「ねえ……マスター……」
いつもなら「あなたはマスターじゃない」と拒み続けていたアルマが、初めて“マスター”の呼びかけを口にした。理久は戸惑い、しかし彼女の震える瞳から決意の色を感じ取る。
「なんだ……? 何でも言ってくれ。俺にできることがあるなら……」
その問いかけに、アルマはか細い声で言った。
「もし……このまま、ボクが壊れてしまったら……この体が二度と動けなくなったら……。ボクの“心”を、どうか……守って、ほしい……。ボクが持っている想いを、誰かの手に渡さないで……」
まるで人間が遺言を託すような響きだった。そこには前のマスターの面影を宿し、自分なりの意志で“生きていたい”と願うアルマの真情が詰まっている。理久は喉が詰まる思いで、かろうじて「わかった」と頷くのが精一杯だった。
そんな二人のやりとりを見守った凛花は、決意を固めたようにタブレットを握りしめる。
「いいわ、同時ハッキングに賭けましょう。外部からのアクセスを検知できたら、アルマが内側からセキュリティを攻撃する。私と勝峰さん、それにスタッフのみんながサポートする。万一変な動きがあれば、途中でやめればいい」
危険な賭けだが、後戻りはできない。それに、アルマ自身が“やりたい”と思っているのであれば、皆がそれを支えてやるしかない。
「よし、みんな聞いたな。すぐに準備にかかろう。ラックやコンソールの電圧や配線を確認して、アルマが集中できる環境を整えるんだ」
勝峰が号令をかけ、スタッフたちが動き始める。複雑な配線の一部を確認し、緊急用バッテリーを探し、ラボに転がっていた冷却パーツらしきものを掘り起こしてアルマの“発熱”を少しでも抑えられないか試してみる。
――皆が懸命に働く合間、理久は改めてアルマの手を握り、小さく息を吐いた。頭の中には幼少期の自分が抱いた恐怖がこびりついている。アコアなんて信用できない――ずっとそう思ってきた自分が、いまはアコアを必死に守りたいと思っている。この数時間の間に、何かが大きく変わり始めているのかもしれない。
「アルマ……もし、成功したら、この先はどうするんだ?」
自分でも、なぜそんな問いを口にしたのか分からない。ただ、封鎖が解けて世界が開けたとしても、アルマの“存在”は法律上も、社会上も問題だらけだ。遺伝子コーディネートの凛花ですらアコアを自由に持てない世界で、アルマはどう生きればいいのか――。
アルマは目を伏せ、かすかな声で呟く。
「……ボク、まだ分かりません。マスターがいなくなったこの世界で……どうしていいのか……。でも、もう『一人』には……なりたくない……」
理久はそっとアルマの手を握り返し、「ああ、俺たちがいる」とだけ答えた。先のことは分からないが、少なくとも放置したり、見捨てたりするつもりはない。
バチッ――。
そのとき、サーバーラックの天井付近から火花が散った。何かの配線がショートしたのか、研究スタッフが慌てて工具を手に走る。リスクが高い作業だが、これはもう“戦場”に等しい。誰もが生きるために必死なのだ。
「もう時間がない……。外で警備ロボや謎の何者かが動いているかもしれないし、火災が広がっているかもしれない。やるなら早めに決行しよう」
勝峰が声を張り上げ、凛花が慌ただしくケーブルを接続し始める。アルマは再度ポートを開いて、理久と目が合う。朦朧とした意識の中で、ほんの一瞬だけ微笑むように見えた。
(大丈夫、きっとうまくいく……)
理久は心の中でそう祈る。もしこの同時ハッキングが成功すれば、外への道が開け、アコアへの不信と偏見が覆される一歩にもなるかもしれない。逆に失敗すれば、全員がこの地下に閉じ込められたままか、あるいは警備ロボに処分されるか……。
アルマは最後の力を振り絞るように、深く息をして、アクセスを開始した。パネルに指を触れると、その小さな体がびりりと震え、瞳の色が青く輝き始める。外部の正体不明のハッカーが、外からこの施設に入り込もうとしている――その“瞬間”を待って、合わせてセキュリティを一気に突破するのだ。
ファンの回転音が急速に速度を上げ、サーバーラックのランプがチカチカと一斉に点滅する。溢れんばかりのデータが交錯し、ここが施設全体の“心臓部”であることを強烈にアピールしているかのようだ。
「アルマ……がんばれ」
理久は彼女を見つめる。その身体は今にも崩れ落ちそうだが、心だけは強く光を放っている。幼子の姿をしたアコアが、自分と同じように“孤独”を恐れ、なお人間と共にありたいと願っている。
電流の放電音が激しく響き、ラックの奥から火花が飛ぶ。スタッフたちが悲鳴を上げながらもケーブルを押さえ、勝峰と凛花が端末に乱打する。外部からのアクセスはまだ確認されないが、秒読みは近い。
やがて、アルマの瞳の輝きが最高潮に達した。まるで人間の魂が宿ったかのように――。
その瞬間、サーバールーム全体が青白いスパークに包まれ、あちこちで警告音が鳴り響く。まばゆい閃光の裏側で、アルマが「はっ……!!」と短い息を吐き出し、見る見るうちに膝から崩れ落ちた。
「アルマ……!」
理久が抱きとめるが、彼女は完全に意識を手放しているように見える。けれど、その手首に接続されたケーブルは、今まさに激しくデータを流し込んでいる――まるでアルマの“心”とサーバーが直接対話をしているようだ。
(頼む……間に合ってくれ……!)
誰もが息を呑み、閃光に焼かれるようなサーバールームでただひたすら成り行きを見守る。外部の“誰か”が同時にセキュリティへ攻撃を仕掛けているなら、いまこそ施設の封鎖を解除できるはずだ。
この賭けに勝つのか、散るのか――。
――アルマは、たとえ自分が壊れようとも、人間と“共に生きる道”を信じ、最後の力を捧げている。いつか理久や凛花たちが、彼女の意思を真に理解する日が来るのか。それはまだわからない。だがこの一瞬こそが、彼女にとっての新しい世界へ続く“扉”になるのかもしれない。
眩い火花と耳を劈(つんざ)く警報音の中で、理久はアルマの小さな身体を抱きしめながら、心の底で幼少期の自分と重なる痛みを震わせる。崩れかけた世界の中で、新しい繋がりを見出すために――。
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