第7話

ピザ屋に着いた。

たったそれだけのことだと思うかもしれない。

否、何度この死に損ないを助けたのだろうか。

結局、あの後も2.3回熱中症になりかけ、それでもなお着いてこようとするので、その度に水を買ったり、汗を拭いてあげたり、本当に大変だった。

当の本人はそんな俺の気も知れず、買ってやったアイスを頬張っている…マジで置いてくればよかった。

とりあえず、ピザ屋の冷房の風を体で受け止め、ここまで来た達成感に耽ながら、ピザを受け取る。

香ばしく香るピザのチーズや、具材の匂いが鼻腔をくすぐり、食欲を掻き立てた。

それは彼女も同じなのか、袋を渡すと喜ばしそうにいった。

「ほへはひははのは。ひひひほひはふふへ。」

まだアイスを食べてたのか。

そう彼女の緩んだ顔を見てると、不意に懐かしい光景が脳裏に浮かんだ。

その顔を俺は知っている。

昔、母ちゃんとピザをとりに来て、その重さを手で、その香りを鼻で、その暖かさを目で感じた、俺と同じだ。

一刻も早くそれを食べたい気持ちで満たされながらも、家族で食べるために必死でその思いを抑えてた俺と同じだ。

気づくと、彼女のその白い髪を撫でていた。

「どうしたの?」と言いたげな、不思議そうな顔を向けられたが、俺だってわからない。

ただ、あの時、母親にしてもらったことに習っているだけだから。

母ちゃん、親父、今頃何してんだろ。


アパートに着き、鍵を開けると、彼女は一目散に机へと走っていく。

俺は無惨に歪んだ自分の部屋のドアを見て嘆きながら、

「おい、手はちゃんと洗えよ。」

と、注意する。

「わかったよぉ。」

彼女はそういうが、多分わかっていない。

ずっと楽しみだったのだろう。ワクワクしているのが見てとれる。なんなら効果音がわくわくって鳴っている。

俺は鍵を閉め、靴を脱ぎながら、今にもピザを開けようとしている彼女を洗面台まで引っ張ろうと考える。

しかし、靴を並べようとした時、今更ながらあることに気づいた。

あれ、あいつの靴は?

振り返り廊下を見るが、時すでに遅し。

見事に土やら泥やらで汚れていた。

「お前、靴はどうした。」

彼女にそう問いかけるが、答えは無慈悲にも、

「くつ?何それ。」

あっけからんとした表情で、そう帰ってきた。

「ってことはここだけじゃなく俺の部屋もか?……いや、今はそんなこといい。手の前に足を洗え!」

そう言いながら彼女を風呂場へと連れて行く。

明日には掃除道具買って、綺麗にしないとな。と思うのであった。

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