第8話
手も、足も綺麗に洗い、ようやくといったところでピザを食べ始める。
ハプニングが多かったおかげか、ピザの濃い味付けが体に染みる。
その感動に浸りながらも彼女の方を向くと、ピザに感動しているようだった。
伸びるチーズに目を輝かせている。
「美味しいか?」
「うん!こんなの初めて食べたよ。ありがと!」
不意にみせられた彼女の笑顔はその瞳に負けず劣らず、輝いていた。
ついでなので、気になっていたことを聞いてみる。
「なぁ、靴のことほんとに知らないんだよな?」
「え、うん。そのくつ?ってのは知らないよ。教えてもらってないし。」
そういって彼女は、次のピザへと手を伸ばす。
こいつ、5切れ目に手を出しやがった。
「教えてもらってないってことは、他に教えてもらったことがあるのか?誰に?」
彼女はしばらくの間ピザを咀嚼すると、飲み込んで、言った。
「うん、管理人さんに。」
「管理人ってあいつだよな?ここの住所とか、俺の個人情報を晒しやがったクソ野郎。」
そうだ。今こいつの面倒を見てるのも、そいつのせいだと思うと腹が立ってきた。
「そんなふうに言わないでよ。あの方は僕たちにいろんなことを教えてくれたんだ。
言葉とか、常識って言われることとか…あとピザも!」
「じゃあ、なんで靴は知らないんだよ。」
あと常識学んだのにピザの5ピース目に手を出すな。
「さぁ?」
俺の問いに彼女は、そう首を傾げる。
絶対覚えてなかっただけだこれ。
俺はそう呆れながら、6ピース目へと手を伸ばす彼女を制止して、最後の一切れを頬張ると、片付けを始めた。
時計の針も10の文字を越えたところで、部屋から持ってきた布団を広げる。
今日は疲れたし、風呂は明日にでも入ろうと思い、その上に寝転がったところであることに気づく。
布団が一枚しかない。
いつもなら、それで事足りるのだが、イレギュラーにも、今は2人。
どうしようかと考えていると、彼女がこちらへと走ってきて、勢いよく布団へと飛び込んだ。
「ダーイブ」
その影響で頭が腹へと激突。思わず悲鳴をあげてしまう。
「ちょ、おい、いてーよ。」
「う〜ん?あ、ごめんねぇ。」
よくよく見たら少し眠そうである。
「なぁ、死神も寝るの?」
「あはは、当たり前でしょ〜死神を何だと思ってるの?」
何かわからないから聞いてんだよ。
しばらくスマホをいじっていると、すぅ、すぅ、と穏やかな寝息が聞こえた。
彼女の方を向くとすでに眠っているようだった。
俺は掛け布団を掛け直すと、電気を消し、布団の横へと寝転がる。
幸い、畳のおかげでそこまで辛くはない。
明日の体を心配しながらも、横で寝ている新生物のことを考えながら1日を終えた。
この一ヶ月がなかったら、 甘栗むかせていただきました。 @kuri-manju3131
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。この一ヶ月がなかったら、の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます