守りたい

第9話

『後は任せたぞウェル』

誰かの声が聞こえて俺ははっと目ざめる。

シーンと静まった。

「ミャオン」

聞こえたのは猫の鳴き声だった。

猫がその場に座りこんでいた。

唯一の愛猫、ルル♀だ。

ルルを撫でると嬉しそうにすり寄せてゴロゴロと喉を鳴らした。

なんだ……?今の?

どこかで弟の声が聞こえた気がした。

そうだよな、きっと気のせい。

幻覚だったのだろう。

俺は気を取り直してもう一度寝ることにした。

あのときから俺たちは離れ離れになった。

幼い波瑠はるを置いていくなんて心配でたまらなかった。

だけど、波瑠を守るためと本来できなかったことも全部決断した。

今やらないといけないんだって。

そうだ、やるしかないんだ。

しまっ……。

咄嗟にあの時の光景を思い出し、 息が荒くなり咳き込んでしまう。

駄目だ、まだあの時の光景が怖くて症状が出てしまう。

俺のせいで何度も波瑠はるを何度も失いかけたんだ。

そのせいで波瑠はるにとって大切な両親も助けられなかった。

葬式の時、波瑠はるは泣いてなかったと聞いた。

起きて気付いたときには既に俺は病院のベッドで寝ていた。医者や看護師の目を盗んで脱走したが…。

未だにあの時の光景を思い出してしまう。

葬式は絶対に波瑠だって辛かっただろうに……。

それは俺でも分かっていた。

きっと波瑠は我慢したんだ。

波瑠は昔から関わることを恐れ人を避けていた。

本当に彼女は我慢強い子だった。

そんな彼女をいつしか好きになっていたんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る