第3話 第1ドラゴン発見!

「あ……あれ?生きてる?」


気を失っていたが怪我はしていないようだ。辺りにはさっきほど使った銃が3挺転がっている。とりあえず拾おう。


一つ目は両手で撃つやつその1。いかにも古そうな見た目だ。というか重!5Kgぐらいあるよ……


「いかにも古そうだ」


二つ目は片手でも使えそうな拳銃。これも時代を感じる。刑事ドラマみたいに握るところに弾を入れるわけでもレンコンのようなのがあるわけでもない。引き金の更に銃口側に弾を入れるようだ。


「これもいつのだよ……」


3つめは先ほど女神の足を粉砕した大きい銃。正直持ち運びたくないレベルで重たい。


「でも火力は高いんだよな……」


とりあえず持ち物をまとめて移動の準備をした。あと持ってるものは……ポケットのイヤリングか。忘れないうちに耳に着けておこう。この世界で日本語が通じるはずはないのだから。


「じゃあどうしようか?」


💬「食事はどうする?」

💬「どの方向に歩むべき?」

💬「近くに人はいないの?」

💬「獣とかは襲ってこないの?」


脳内には無数の選択肢が思い浮かぶ。だが全て記すには余白が狭すぎる。それに碌な解決策が思い浮かばない。


そして困難な時に問題は起こるらしい。私のいた世界には実在しない動物と目が合ってしまった。巨大な爬虫類……いやドラゴンかな?こんなところで強制バトルかよ!


「……」

「いや……別に戦う気は無いんだけどね……」

「僕と会話できる生物に会うのは久々だ」


このイヤリングの効果か?てっきり相手の言葉が分かるだけと思ってたけど双方向翻訳のようだ。便利だがこれではちょっとした小言も言えない。


「マジで!?そりゃ良かった……この世界にきてすぐだから勝手が分からなくて」

「この世界?まるで違う世界から来たような言い草だな」

「その通り。別の世界から来たよ」


ドラゴンは考え込んでしまった。


「えっ……なんか気に触ること言っちゃった?」

「小さい頃にお袋から奇怪な動画で空を飛ぶ生き物の話を思い出して。そいつも違う世界から来たという噂だった」


空を飛ぶ生き物?私と同じ世界の人間とすれば間違いなく飛行機ごと転生したパイロットか関係者だろう。少なくとも私以外にも転生者がいるのは本当のようだ。


「それっていつの話?」

「いつだったか……皇帝が10代ほど前の頃だったけな……」

「10人も代替わりか……」

「もう死んでるだろう」


寿命が人と同じなら軽く1世紀は超えている。会って助けを乞うのは無理だろう。


「では予定があるのでな。さらばだ」

「え!?せめて最寄りの街の位置とか教えて!」

「西にいけば町がある……あるんだが……」

「何もったいぶってるの?」

「お主の足では7日以上かかる」

「そんなに?」


徒歩で七日……東海道半分ぐらいの距離か?だとしたら大体250Kmほどだ。流石に過疎地すぎないか?


「ここはシベリアかアマゾンか?」

「聞かれても知らない地名だ」

「そんなに秘境みたいなところなの?」


「恐ろしい程までに排他的だ。追い出されるどころか殺されるかもしれない」

「野蛮過ぎない?」


人見知りにも程があるだろう。それとも盗賊の根城などか?ある意味目の前のドラゴンより怖いのかもしれない。


「最近帝国からの独立を宣言してピリピリしてるんだ。国境を壁で囲み徹底抗戦の構えを取るぐらい」



「あれ?詰んだ?」

「魔獣豊かなこの地に街なんかない」

「ま、魔獣?そんなのがいるのか……」

「目の前にもいるだろ?」


言われてみればこのドラゴンも魔獣の一種か。話が通じるというだけで忘れていた。


「まあ大半は何もしないと思うが縄張りを荒らしたり腹を空かせたのに絡まれないことだな?」

「君は襲わないの?」

「異世界の生物など食当たりが怖い」


それは良かったがその他が何もよろしく無い。サバイバル技術なんか持ってないしこの銃で戦えというのか?弾はどうする?食事はどうだ?


「あとこの地は追放刑という名の死刑に使われる。運が良ければ誰かと出会えるかもな」

「追放刑?」

「聞き耳を立ててると大半は無実なのに飛ばされてるようだ」

「司法制度終わってる!」

「無実の罪の相場は労働刑と聞くから運が無いとしか言いようがない」


それは無実でも懲役ということだろうか?ここの政治がとても怖くなってきた。


「あとは産業廃棄物を捨てにくることもある。全くけしからんが」

「産業廃棄物?」

「よく分からない液体を垂れ流したり袋を捨てている」

「袋?」

「たまに動くんだ……モゾモゾと」

「中身は考えない方が良さそうだね……」

「では!どうにかなってるといいな」


だが龍は哀れにも何も知らない地へ飛ばされた私を無視して大空の深淵へと溶けていった。


「解決の糸口になると思ったんだけどな……」


結局森にただ一人残されてしまった。

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