第4話 第一接触

「とりあえず……」


💬「拠点を作るか」

💬「飯だ!食料の確保」

💬「人を探す」


某北欧産ブロック風ゲームのノリで物事を考えることにした。羊の色は揃ってなくても構わない。まあ寝床よりはご飯……


「それより水か……」


人は脱水に耐えられない。幸いそこまで暑くも寒くもない温度だが綺麗な水など見つかるか?


「でも落ちてきた時に川はあった」


一瞬だが見えたのは間違いない。方向はややあやふやだが別に他にすべきこともない。優先度の高いものから順次潰していこう。


— —数時間歩くと川にたどり着いた。最初の賭けはうまく行ったようだ。


「でもこの水飲めるかな?」


見た目は綺麗。だがここは異世界。そして廃棄物の投棄もされたある。上流で薬品汚染されていたらもう終わりだ。でもこのまま脱水でも終わり。


「濾過するにもビンもペットボトルも何もない!」


なっちもさっちもいかず悩んでいるとドシドシと足音がこちらに迫ってくる。この重さは熊か?ガサガサと草を掻き分ける音も聞こえてきた。


「左か!」


中くらいの銃を構える。デカいのは木々に引っかかるし拳銃では心許ない。


「誰だ!?」

「……」


返事がない。意思疎通する気は無いようだ。皆が皆ドラゴンのように話すわけでも無いのか。


「ヴゥゥ……」

「牛……じゃない……なんだこれは……」


姿を現したのは四足歩行で左右非対称、背骨があらぬ方向で曲がっているように見えるぱっと見牛のようだが哺乳類とも思いたく無い生き物?だ。よく見ると湯気を発してる。


「君は……何?」

「◾️◾️◾️◾️ーーーー!」

「言葉は解さないか。襲ってくるならこっちもやるよ」


ただのうめき声にしか聞こえない。だが殺意というべきか?怨念のような嫌な雰囲気を感じた。初対面の私に向ける感情じゃないと思うけど。


「◾️◾️◾️◾️!」


雄叫びをあげながらこちらに突進してくる。私を殺す気でいるのは明白。


「これだったら日本でも正当防衛だ!」


無許可で銃を持っている段階で法律違反というツッコミは無しだ。そもそも無人地帯な訳だし法律なんてないのか?そんな馬鹿なことを考えながら引き金をひくが何も起きない。


「嘘!使い方ミスった?」

「ヴァァァ!」


右に横転して何とか躱わせた。頭が悪いのか敵はそのまま木にぶつかる。人間必死になると意外と動く……そんなことを考えている暇はない。


「どれだ?何をすればこの銃は動く?」


私は銃の左側面を見た。


💬「FULL AUTO?このレバーなら自動?」

💬「FIRE←→SAFE?このレバーか!」

💬「この銃って鈍器じゃない?」


FIREは発砲ぐらい直ぐにわかった。でも敵は脳震盪を起こしたのかぼんやりしてる。やつを殴りつけよう。


「こいつはどう?」


勢いよく銃を叩きつけた。敵は興奮しているのか全く効いてないようだ。


「素直に撃つか」


そう決めレバーをFIREの方に……あれ?既になってる?さっき殴った時に切り替わったのか?


「FIREすら読めねえのか……このガキは」

「!?」


声が聞こえたが音源が分からない。内部から話しかけられている感覚だ。


「誰?どこ?」

「ここさ」


?????

気持ち悪い。幻聴か?指向性もなく理解ができない。まさか死刑囚と出会った?


「頭の回転が遅い。勝手にやるぞ」

「何を?」


すると身体が勝手に動き出した。操られてる?自分の体が他人のようだ。


「ここでお前に死なねると俺も詰むからな。安全装置セーフティーすら分からんやつに任せられん」

「流石にそれぐらい分かってるよ!」


さっきレバーが切り替わってたのはこいつの仕業だろう。銃に取り憑いてる悪霊やもののけの類か?


「さて久々のこの世界。肩慣らしに丁度いい」

「ヴヴァァァーーーーーー!!!!!!」


身体を乗っ取ったこいつも敵を倒す気のようだ。だが先ほどの攻撃が効いてるように見えなかったけど本当に倒せるのか?


「こう言う獣はちゃんと弱点を狙わないと意味がなねえ」

「弱点ってどこよ?」


銃を腰ではなく肩に当てて構える。狙う時はこうするのか。考えれば当たり前だが咄嗟には出来なかった。反省点だ。


パパン!


一瞬だけ引き金を引き数発を発射。敵の右目に当たった。敵はその場でのたうち回っている。


「目、耳、口の中。特に目なら倒せなくても潰せばアドバンテージを得られる」

「言われればそうだけど実践できる気がしない」

「こういうのは慣れさ」


パン!


また1発放たれた。だが弾丸は途中で砕け散る。


「あいつ……何をした?」

「女神の使った見えない壁と同じ感じだ」

「厄介だな」


敵は胴体が青く光出した。何かする気だ。嫌な予感しかない。


「次はどんな手品だ?」

「楽しんでる余裕はないんじゃ……」


直後敵の口から青くて細い光が放たれた。間一髪当たらなかった……いや、光を避けられるはずがない。単に外したようだ。


「た、助かった」

「それより見ろよ……光の通った跡を」


綺麗に一直線の道が誕生した。おまけにところどころ燃えている。


「ばばばばばばばばぶ……」

「完全に壊れてるな」

「さっさと黙らせよう」


あれを放置してはまずい。逃げようにもあんなレーザーで薙ぎ払われたら終わりだ。


「だが銃は効かないしどうしろと?」

「片目は潰しレーザーも外した。連射もないから何か手はあるはず」

「なら化け物には化け物をぶつけてやる」


そう言って取り出したのは背中に担いでたデカい銃。確かに化け物サイズだ。


「女神の足を吹き飛ばした対戦車ライフル。これなら当たれば死ぬだろ」

「でも壁をどうする?」

「壁越しに光をぶっ放せるとは思えねえ。やられる直前にやってやる」


レーザーと壁は両立しないと考えているのか。そうだといいがここは知らないの世界。どっちが正しいのか私にはわからない。


「Go ahead, make my day.」

「やるしかないか……」


敵の第二射が来る。さっきのように外すこともないだろう。また口元が光るが。まだ。


まだ。

さっきのを思い出すんだ……

レーザーが出る直前に一瞬光が強くなっていた。


「焦ってえ……!?」


あと少し。

残り僅かなはずなのに体感数分にも感じる。


「今!」


引き金を引き敵の口に命中。敵は全身が青く光出した内側から盛り上がっている。自爆かな?


「何とか倒したね」

「そうだが……俺の他人を操る力も相当落ちたようだな」

「え?そう?」

「最後に引き金を引こうとした時に引けなかった。まだとか言って止めてただろ?」

「無意識にやってた……」


完全に乗っ取られた訳ではなくやろうと思えば乗っ取りをキャンセル可能……これで完全に好き放題されるわけでないのは助かった。


《謎の爆発を確認。方位280》

《了解。確認する》


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人違いで転生〜武器と亡霊に身を任せつつ生き延びる〜 @suo_nagato

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