第11話 決戦の予兆
夜の静寂を切り裂くように、警鐘が再び鳴り響いた。タクマは眠りから目を覚まし、ベッドから飛び起きた。工場内に緊張感が走り、人々がそれぞれの持ち場へ急ぐ。
「何があった?」
タクマは見張り台に駆けつけ、状況を確認する。ミサキが双眼鏡を手に、遠くを凝視していた。
「南の森の方角に明かりが見える。火だと思う。」
彼女の指差す先には、赤い光がちらついていた。それは不気味なほどに静かで、明確な危険の兆しを感じさせた。
「略奪者たちか?」
タクマが尋ねると、隣にいたリュウが頷いた。
「可能性は高い。あの明かりの広がり方を見るに、集団で動いているはずだ。」
「準備を急がないと。」
タクマはすぐに指示を出した。工場の防御ラインを再確認し、武器や工具を整えるために全員を動員した。
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工場内では緊迫した空気が漂っていた。人々は急いでバリケードを補強し、使える道具を集めていた。タクマとミサキはそれぞれの持ち場を確認しながら、住人たちに指示を与えた。
「タクマ、これで全ての入り口を封鎖したわ。」
ミサキが報告すると、タクマは深く頷いた。
「ありがとう。これで少しは時間が稼げる。」
しかし、彼の目はどこか険しいままだった。リュウが近づき、小声で言った。
「防御を固めるのはいいが、奴らが武器を持ってきていたら、バリケードも無力だ。」
「分かってる。でも、他に何か手はあるか?」
「奇襲をかけるのはどうだ?森の中で迎え撃てば、奴らの計画を崩せるかもしれない。」
その提案にタクマは一瞬考え込んだが、やがて頷いた。
「わかった。少人数で行動しよう。俺とリュウ、あと数人で向かう。」
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夜の森は暗く、冷たい風が木々の間を吹き抜けていた。タクマたちは懐中電灯の明かりを最小限に抑え、音を立てないように進んでいく。
「ここだ。」
リュウが手を挙げて立ち止まった。前方には略奪者たちのキャンプが見えた。焚き火を囲む彼らは、武器を手にしながらも油断しているようだった。
「人数は十人ほどか。」
タクマが囁くように言うと、リュウは頷いた。
「こっちの人数で正面からぶつかるのは無謀だ。火を消して混乱させるのがいい。」
タクマはその提案を了承し、仲間たちに指示を出した。
「火を囲むやつらに気づかれないように回り込む。全員で一斉に焚き火を消すんだ。」
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計画通り、タクマたちは略奪者のキャンプを包囲し、焚き火に接近した。火の熱気を感じながら、全員が緊張感に包まれる。
「今だ!」
タクマの合図で、全員が一斉に焚き火を覆い隠した。暗闇に包まれた略奪者たちは驚き、慌てて武器を構えた。
「何だ!?誰だ!?」
その混乱の中、タクマたちは速やかに撤退を開始した。火を消しただけでは決着はつかなかったが、敵の動きを遅らせることには成功した。
「急いで戻るぞ!」
工場へと急ぐタクマたちの足音が森に響いた。
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工場に戻ったタクマたちは、住人たちに状況を報告した。
「略奪者たちは混乱してる。少しの間、時間を稼げたはずだ。」
ミサキは頷きつつも、不安げな表情を浮かべた。
「でも、いずれまた来るわ。次はもっと準備してるはず。」
「その時は全力で守る。それだけだ。」
タクマの言葉に住人たちも頷き、一丸となって防衛の準備を続けた。
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夜が明ける頃、工場周辺には再び静けさが戻った。しかし、タクマの胸には新たな覚悟が芽生えていた。
「俺たちは生き延びるだけじゃない。この場所を守るために戦うんだ。」
その言葉は仲間たちの心にも響き、さらなる決意を生み出していった。
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