第3話

「ふわぁぁ……」


平日の午前中、起きる

本来ならこの時間は、俺とおんなじ年くらいの学生や、普通の会社員の方なら寝坊の時間である


愛しの妹は現役バリバリのJCのため、学園に行っている

おれは朝が非常に弱いので、おれの手作りお弁当ではなく学食を食べてもらうことにしてる

まぁあいつだったらおれと同じような生活してても大丈夫な気がするが


おれも、何も予定がないならホントは夕方まで寝ていたい、なんなら昼夜逆転生活を送っていたい

でも……やらなくちゃ、いけないことがあるから




「おーっす!元気か元気か?」

「紅灯くん、おはよう」


ここは、音楽を楽しめるカフェ

かなり無名でマイナーなカフェだが、来ている人やリピーターは多い

おれはこのカフェで準レギュラー化してしまっている

いいことなのか、悪いことなのか……


「あらあらぁ、今日もお願いね」


物腰柔らかくて、全てを包みこんでくれるような包容力のある茶髪の女性

名前は葛城美沙かつらぎみさ

ここのカフェの店員

元女性バンドでオラオラやっていたとウワサで聞くのだが……本当なのだろうか??

こういうタイプの人は、怒らせると絶対に怖いので、過去のことはあんまり詮索しないでおこう


耳は髪で普段は隠れているのだが、たまたま髪で隠れてない耳をみたらピアス穴たくさんあいていた

なので、ウワサは本当かも?しれない


それでいうと、おれだって耳にピアス穴ある

っていうか、普段からピアスつけてるし

昔から、いい意味でも悪い意味でも、豹変してしまったんだなぁ、おれって


そんな彼女は、おれの昔のことを知ってる

そして、ボロボロに鳴ったおれを見かねてか救いの手を差し伸べてくれた

それが、ここのカフェ


まだ、出るまで時間はあるので、控え室で少し休んでおく


「今日も頼んだぞ〜」


控え室に堂々と入ってきておれに構ってくる男

こいつはここのカフェの店長だ

おれたちみんな店長さんと呼んでいる


「そんな高頻度で呼ばれても、おれのキャラ作りに少し支障が出ちゃうんですが……」

「まぁまぁ!それくらい許してよ〜!パンケーキ奢るからさっ!」

「…………しょうがないですね、本当に」


おれは、神秘的で神出鬼没の吟遊詩人みたいな会えるのSSRレアリティのファンたくさん抱えてるキャラになりたいのに……なりたいのに……

こ、こここ……こんな、同じ場所で準レギュラー化しちゃったら、全然レアに感じなくなるじゃないかっ!!


ま、まぁ、仕事だからしょうがない

頼まれた仕事は、ちゃんと最後までやりきる

それが、おれのやるべきことだから


そう思って、髪型を整えてあげて、おれは持ってきた荷物中から白いキツネのお面を被る

そして、カフェの会場へと向かう

ここのカフェは珍しいことに部屋が2つある

1つは通常の飲食スペース

でも、注文の時にとある合言葉を言うと、音楽会場へと行くことができる


おれの仕事は、音楽会場に来た客を満足させること

さぁ、パフォーマンスのはじまりだ


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