第18話 南海

「着いたぞ。ここがイワナーだ」

 南海の海辺にあるイワナーという名の地域。

 そこで広い海が見渡せるホテルについた。

「さっそくだが、お昼にしよう」

 レイクが放った言葉を聞き逃すわけがない。

「行こ、すぐ行こう!」

 食いぎみに前のめりになる。

「ああ。行こう」

 ルンルン気分でわたしはホテルの飲食店に向かう。

 そこにはたくさんの食品が並んでおり、どれでも好きなものを、好きなだけ食べていいらしい。いわゆるビュッフェだ。

 わたしはパンとお肉を皿いっぱいにのせる。

 席につくとマナーも忘れ口に運ぶ。

「うまい!」

 お肉にかかったソースをパンでぬぐい、口に放り込む。

 これはなかなかいい味だ。

「うまい!!」

 お肉に染み込んだソースもいい。

「うまい!!!!」

「いや分かったから」

 小声にしてくれと頼んでくるレイク。

 周囲を見渡すと痛い視線が飛んでくる。

 そこで自分の恥を知った。

 食べるところを注目されれば、さすがのわたしでも恥ずかしい。

「失礼しました」

 しぼむような声で黙々と食べることにした。

「まだ食べるのですか?」

 ペリーが目をぎょっとさせる。

「ははは。剣の稽古をするなら体力作りからだ。まずは脂肪をつけないとな」

「太ったと言いたいの?」

 さすがのわたしでも傷つく。

「女の子に太れはないんじゃない?」

「いや、筋肉を育てるには、だな」

「ジオのおたんこなす」

「……どいう意味だ?」

 困惑するジオ。

「バカっていう意味よ!」

「む。俺はお前のことを思ってな!」

「それで、太れと?」

 眉をつりあげる。

「ジオさん、デリカシーに欠けますよ」

 ペリーが本から視線を外す。

 理知的な笑みに心のささくれが静まる。

「レディーはもっと丁寧に扱うべきです」

「はん。そんなこと知るかよ」

 ジオは荒々しい声音で唾を吐き捨てる。

「人の感情の機微をとらえるのも立派な修行だよ」

 ジルがため息を吐きながら歩みよってくる。

「気にしてはなりませんよ。アヤメ」

「うん」

 ジオに期待するのが無理だって。

 わたしも丸くなったもんだ。

「なんだよ。その冷めた目は」

 わたしの向けた視線が気にくわなかったようで、ジオは反抗的な視線を向けてくる。

「別に。わたしが皇太子なら追放だなって思っただけ」

「おいおい。ジオは貴重な戦力だぞ」

 ようやく口を開いたレイクは困ったように眉ね※を寄せる。

「レイクもわたしよりジオなんですね」

「いや、いなくなったら困るというだけでな……」

「ふふ。冗談だよ」

「……びっくりさせるなよ」

 わたしのこと、どう思っているのか分かった気がする。

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