第16話 集中
レイクと約束をかわしたのが二日前。
彼もまたアレンと同じようにわたしに気があるのだろうか。
冷静に考えてみて疑問は生まれるけど、ペリーの言葉を信じるなら、レイクもだろう。
でも王様であるレイクがわたしに惚れるわけがない。
悶々とした気分で、わたしは剣術を学ぶ――。
「足下がおろそかだ」
ジオが足払いをする。
「へぶっ」
わたしは顔面から砂にめりこむ。
「何を物思いにふけっている?」
「いや、まあ……」
「剣を握るなら集中せい」
「分かりました」
「へぶっ!」
「お前はまだ考えているぞ!」
「そう言われても……」
「はぁー。もういい。木剣に集中しろ。まずは神経を研ぎ澄ませろ」
「えー」
「えーじゃない。集中しろ」
「はーい」
集中集中。
レイクの苦笑いが浮かぶ。
「ぶっ――」
「何を吹き出している?」
「いや、面白すぎて……」
「だから、何が面白い」
「いえ。わたしの中で彼が……」
くすくすと笑うとジオは困ったように肩をすくめる。
「すみません。今度こそ集中します」
しかし、わたしはレイクのこと、どう思っているのだろう。
あの劇中と同じならわたしは王様と結ばれるのだろう。
だが、あれはフィクションだ。
ありえない。
そう割り切り、わたしは剣の訓練を終えるのだった。
「最近、いいことあったのかい?」
マーヤが優しい笑みで訊ねてくる。
「え。別に?」
「でも楽しそうにしているじゃない」
「何を言っているのよ。マーヤ」
「敬語もうまくなったじゃないか。まるで誰かの影響を受けているかのよう」
「……そうかもね」
わたしは困ったように頬を掻きつつ、歩き方を学ぶ。
「大股になっているわよ」
「す、すみません」
慌てて足取りを変える。
でも、
「おととと」
バランスを崩し、その場に倒れる。
「ははは。あんたはまだまだ稽古が必要みたいだね」
「そうですね。まだ歩けもしない」
苦笑し、立ち上がる。
「別にいいんじゃない。まだひよっこなんだから」
「それが嫌なんですよ。わたし、一ヶ月は経つのに」
「はっはっは。それがひよっこって言うんだよ」
バンバンと背を押すマーヤ。
「痛いって……」
「はっはっは。頑張れ。若者よ」
そりゃマーヤに比べればわたしはまだ若者だろうけど。
ため息が漏れる。
「頑張ります」
そう答えると、わたしはマナーの練習を再開する。
マーヤは豪快で快活な人だな~と思いつつ、頑張る。
彼女みたいになれたらいいのに。
わたしはなんだか些細なことを気にしすぎるのかもしれない。
生真面目すぎるとは、マーヤに言われたことである。
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