第12話 喫茶
大通りを歩いていくと、中央広場にある噴水を横切る。
その先にあるカフェに訪れる。
テーブル席に案内されてわたしとアレンは座る。
パンケーキとオススメの紅茶を頂くことにした。
「アヤメは休みの日、普段何をしているんだ?」
「とくには? ぼーっとしていることが多いかな」
「ボクは魔導書を書いているんだ」
「ふーん」
届いた紅茶をすするわたし。
しばらくしてパンケーキが机にくる。
おいしそう。
ふわふわのスポンジにバターとハチミツがたっぷり。
「眺めていないで食べたらどうだ?」
アレンは容赦なくパンケーキを切り分けて食べている。
「え。でも、なんだかもったいない」
「もったいないのは食べないことだぞ」
「……それもそうか」
わたしもフォークとナイフでパンケーキを切り分ける。
そして口に運ぶ。
甘い。
ふわふわで甘い。
蕩けそう。
うまい。
「どうだ。うまいだろ?」
「うん。そうだね」
つい笑みが零れる。
「また来ような。アヤメ」
「うーん。いいけど?」
「そか。良かった」
嬉しそうにパンケーキを頬張るアレン。
本当に甘党なんだなー。
子どもっぽい一面を見てホッとする自分がいる。
そんな二人だけの時間を過ごした。
食べ終えると帰り道、近くの雑貨屋に立ち寄る。
「どうしてここに?」
「ああ。妹に買いたいものがあるんだ」
「妹、いるんだ」
「リーンって言うんだ」
アレンはにこやかに笑みを浮かべて木彫りのクマを手にする。
「それはやめておこう?」
もしかしてアレンの感性でやばい?
「どれがいいかなー」
「女性ならアクセサリーの方がいいんじゃない?」
「アクセサリーはまだだ。だって六つだぞ?」
六つ!?
それなら雑貨よりも。
「お菓子とかの方がいいんじゃない?」
「でもな。リーンは残していきたいと思っているんだ」
「あー。形あるものがいいんだね」
なるほど。
だとしたら何がいいのだろう。
じーっと周りを見渡す。
「うん。このネコのカップとかどう?」
「こういうのはいいかもな。ありがとう」
レジに向かうアレン。
良かった。喜んでくれたみたい。
「さ。帰ろうか」
わたしはアレンにそう言う。
アレンは少し困ったように眉根を寄せる。
「あー。そうだ。このあと劇でもみないか?」
「劇? 行ったことないや」
「じゃあ、行ってみないか?」
アレンは少し頬を染めている。
なんだろう。
この安心感は。
「こっちだよ」
アレンは優しい声で案内してくれる。
中央広場を抜けて端っこにある劇場に向かう。
劇場は大きく、昔ながらの建物な印象がある。
劇か。どんなのだろう。
不安と期待が入り交じった気持ちで入り口に向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます