アレンとの魔法訓練に入る。

　マナの流れを汲み取ることに集中して、わたしは座禅をくむ。

「うーん。わからない」

「じゃあ、ボクがマナを流してみるから感じ取ってみて」

　そう言ってアレンは背中に手を当てる。

　ドンッと身体の中に何かが入ってくる。

　これがマナの奔流。

「どうだった？」

「なんとなく感覚はわかった。あとは自分の中にあるかどうか……」

「感じ取れるなら才能あるよ。凡人には感じ取ることすら不可能だからね」

「ふーん。そっか」

「なんだか、あまりぱっとしない答えだな」

「じゃあ、どう反応すればいいの？」

「いや、まあ。悪かった」

　謝るくらいなら最初から言わなければいいのに。

「で。マナの流れが分かったよ。次は？」

「次は変換だな。火、水、風、土の四属性への変換をしないとマナは壊れるから」

「変換ってどうするの？」

「こればかりは自分でつかむしかないからな。一応見せるけど」

　アレンは手のひらを前に突き出し、マナを集める。

　そしてそのマナに色がついていく。

　水が現れる。

「ボクはこれくらいしかできないな」

　発射された水鉄砲が樹木に当たる。

「……威力弱めたでしょう？」

「ああ。見せるだけだからな。本気の戦いなら殺意ものせる」

「怖い話だ」

　しかし変換か。

　どうすればいいのだろう。

　マナを手のひらに集めてみる。

　ボッと何か出るけど、煙りのようにすぐに消える。

「マナの扱いはできるな。消えるのは変換できずに放出するからだ。外界にできる形にしないといけないんだ」

「そう言われても……」

「マナというのは外界に存在しちゃいけない物質だからね。形あるものに変えないと。人の精神と一緒さ」

「精神？」

「ああ。精神と似た物質であるからして」

「なんか先生っぽいこと言っている」

「一応、ボクは魔法の先生だけど」

「そう言えばそうだ」

　座禅を組んでマナを流していく。

　手のひらに集中するけど、うまくいかない。

「最初はそんなもんだ。……そろそろ時間だな。このあと暇か？」

　アレンはそう言ってわたしの肩に手を置く。

「え。暇だけど？」

「パンケーキでも食べにいかないか？」

「え。どうしたの？　急に」

「いやパンケーキって女子っぽいじゃん。ボク、甘党なんだけど、食べに行きづらくて……」

　なるほど。

　アレンは甘党で、甘いものを食べたい。

　でも女子が集まるところには行きにくい。

「分かった。これも慈善活動だね」

「……助かるよ」

　なんだか含みのある言い方だね。

　わたしも噂のパンケーキを食べられるなら嬉しいし。