第5話 魔法
「珈琲にはミルクと砂糖が合うらしい」
そう言ってペリーはわたしのカップにミルクと砂糖を薦める。
「どうも」
「礼は言えるようになったね」
ペリーは口元を緩める。
ミルクを少しと角砂糖を二つ入れてみる。
スプーンでかき回すと、色が柔らかくなる。
ごくっと飲んでみる。
「あ。飲める」
「ブラックは飲めないんだね」
「まあ」
ペリーはもの静かな印象がある。
だからジオのようにグイグイはこない。
それが気楽な時もある。
あるが
「物足りない」
「ほう。お菓子か」
「あ。いや、そうじゃ……」
「いいんだ。これが洋の菓子だ。パウンドケーキというらしい」
「ふーん」
わたしは躊躇なく、パウンドケーキをフォークでぶっさす。
「こうやるのです」
ペリーはフォークで丁寧に切り崩すと口に運ぶ。
「食えればいいだろ」
わたしは荒っぽく口に頬張る。
「うん。うまい……!」
「良かったです。これはあなたのために購入したのだから」
「ほへー。お金持ちだー」
曖昧な笑みを返してくるペリー。
実際、参謀本部として王族直轄の組織なのだ。その一番上となれば、それなりに給金も頂いているのだろう。
だけど、一介の見習いに出す食べ物でもないと思うけどね。
お茶を終えると、わたしはマーヤのもとに向かう。
彼女からは主にマナーを学んでいる。
あれをしてはダメだ。あれをしなさい。
そんな言葉にうんざりするけど、生きていくためには必要なことらしい。
わたしにはさっぱり分からないけど。
その後、わたしは魔法の勉強のため、訓練場に訪れていた。
「どんな人だろう」
イケメンが多い、この国。
でもわたしは恋愛などにうつつを抜かす訳にはいかない。
だってわたしは生きているのが重要だから。
先週の魔力測定量から算出された魔法適正。それの結果がわかり、今こうしている。
「待たせたな。アヤメ」
そう言って現れたのは昨日の食堂で一緒したメガネくん。
「あ。メガネくん」
「失礼ですぞ。ボクはアレン。魔法師だ」
魔法師。
それは国でも有数の魔法を行使する人間のこと。
この魔法を発現するには遺伝が強く出る。しかも子ども全員に出る訳でもなく、魔法師の出生率はわずかいちパーセント。その限りある出生の中、努力を重ね成功するものはもっと少ない。
現在、リハン国でも魔法師の確保に全力をそそいでいる。
魔法があれば農作業も、商売も、戦争も、すべてがうまく行く。
魔法師の数が実質その国の国力と結びつくと言われている。
そのため、魔法師は重婚が認められており、補助金も出る。
一方で、その魔法師の地位を利用した犯罪組織も生まれている。
そんな魔法師の資質がわたしにもあるなんて……。
予想外だぜ!
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