第4話 スキル獲得
「みなさん、この事件は解決いたしました。」
俺が口を開くと、金髪君たちほかの生徒も含めて皆が驚く。
「いったいどういうことだよ?まだ何もわかってねえじゃないか。でも、分かったってんなら聞かせてもらうぜ。お前の推理をよ。」
「ありがとう、金髪君。」
「誰が金髪君だ!」
「よし、それじゃあ本題に入ろうか。」
「この野郎、無視しやがった。」
「まず、最初に現場に入った時には被害者の指は硬直していませんでした。ですが、彼の指先を見てください。硬直していますよね?つまり、いま、5時間が経過したということです。」
皆の視線が被害者の指先に集まる。
俺は続ける。
「5時間前といえば、4時、つまり、メイドさんが遺体を発見した時刻です。そして死亡したときにはすでに執事さんも騎士様も部屋に戻られていました。」
俺が犯人を指さして冷たいまなざしを向けると皆が一人の人物を凝視する。
「つまり、犯人はメイドさん。あなたです。」
「あなたは麻痺毒かなにかで被害者を動けなくし、時間がたってから、様子を見る演技をして鈍器で殴った。だから現場は荒らされていなかった。鈍器は外にでも捨てたのでしょう。これはもう誰も殺さないという意思表示だと捉えることができます。つまりあなたは個人的に被害者一人を恨んでいたということです。」
「あははは!そうよ。わたしがやったの。あいつが悪いのよ。私を脅すから。だから殺してやったのよ。」
なるほど。現代でいうところのセクハラだな。だが、殺人は殺人この後彼女は伯爵を殺した殺人犯としての人生を生きるだろう。
「みんなお疲れ!」
終わった…。シュミレーションが終了し、ゴーグルを外して俺たちは背筋を伸ばす。
「いやー。今回は本当に残念だったね。でも、次に向けて気持ちを切り替えよう!!」
明るく話す薫先生をみて俺たちはきょとんとする。
「薫先生、俺らクリアしましたよ。」
金髪君がいうと、先生は驚いて、
「ええ!?あれはまちがってD級に設定してあったのに。なんでクリアちゃったわけ??いったいだれが……」
「彼ですよ。」
俺を指さす金髪。
「嘘つくんじゃありません。彼は今日入ってきたばかりですよ?そんなわけないじゃないですか。」
「うそじゃありませんよ。なんなら、記録を確認してくださいよ。」
そういわれて、その管理室に向かう薫先生。俺たちは1階に戻っていくのだった。1階に戻ると、俺以外の生徒たちは前回与えられた課題とやらに取り組んでいた。俺はというと、普通に本を読んでいるだけだった。そうやってしばらくしていると薫先生がやってきた。
「守君、あなたすごかったのね!!」
おそらく、さっきのシュミレーションのことをいっているのだろう。
「はは、ありがとうございます。」
「よーし!今日はスクールを閉めて、焼き肉食いに行くわよ!みんなついてきなさい!」
うおー!!!盛り上がる天の川スクールをみて、なんだか俺も楽しくなったので叫んでみることにした。
「うおー!!!」
日付は変わり今日も学校だ。今日は転校生が来る。教室のドアを開けて入ってきたのは、金髪君こと、型流司(かたながしつかさ)だった。はあ、頭が痛くなりそうだ。2日前、初めてのスクールで、すぐにみんなで焼き肉を食べに行った俺たちは会話が盛り上がり仲良しになった。そしてそのとき、俺の学校に転校するといいだしたから、冗談だろうと思っていたが、まさか本当にやってくるとは。筋肉質で健康的な顔もあいまって筋肉馬鹿にしか見えない。とはいえ、こいつも推理ハンターを目指しているのだから、その辺の学生よりは賢いのだろう。そう考えていると、もう一人入ってきた。いったいだれだ……あ!あいつは爆音ヘッドホン女じゃないか。
「おはようございます。今日から転校してきました。添木蛍(そえぎほたる)です。よろしく。」
黒髪黒目の美少女の登場にざわつくクラス。その日のクラスは彼女と司の話題で持ちきりになった。放課後俺はスクールで獲得したポイントをどう使うか考えていた。じつは、シュミレーションで推理をしたとき、クリア報酬として1万ポイントをもらい、スクールの皆からの賛辞の効果で5000ポイントをもらった。それにしても、クリア報酬として1万もポイントをもらえたのはいいが、D級に設定していたのは俺たちに今の実力を把握させるためだったらしい。それを俺が台無しにしたのだとか。まあ、盛り上がったからいいよな?そういえば、今なら授業を聞くことができるんじゃないか?アプリを開き、確認してみると、この前見た授業があった。タイトルには
「トリプルシンキングー型を使い思考を加速せよ」
と書いてあった。
一万ポイントも消費するのは苦しいが、他に買いたいものがあるわけでもないので、購入することにした。購入ボタンをタッチすると、動画が出てきた。俺は動画を再生する。動画を再生すると若いお兄さんが出てきた。
「やあ、みんな。会うのは初めてかな?僕はアレク・フィッシャーだよ。」
アレク・フィッシャーだって?いったいだれだろうか。まったくわからない。
「今回の講義でみんなに話すのは思考法についてだよ。みんなは普段どう考えているかな?おそらく、この講義を聞きに来たってことは、どうやって考えればいいのか悩んでいることだろうね。そこで私の授業ではトリプルシンキングについて話すよ。」
「トリプルシンキングというのはクリティカルシンキング・批判的思考、ロジカルシンキング・論理的思考、ラテラルシンキング・水平思考のことだよ。」
「もし、絶対的な信頼を得た政治家がいたとして、その政治家が実は汚職を繰り返す悪党だったら?疑うことは難しいだろう。それは疑うことのできる情報を確保していないからに過ぎない。つまり、私が今回教える疑う(批判的思考)、探る(論理的思考)、導出する(水平思考)のプロセスをたどれば答えが出るだろう。」
授業を見終わると、頭の中に声が聞こえた。
―スキルを獲得しました―
―スキルを獲得しました―
―スキルを獲得しました―
これって一つ一つ報告されるのか?まあ、それは置いておいて、声と同時に開かれたウインドウを見ても誰も反応をしないってことは、これは俺にしか見えてないのか?今更だが気づけたのはメリットだな。これならどこで見ても大丈夫そうだ。あれこれ考えていると、ドアが開く。玄関をみると、入ってきたのは爆音ヘッドホン女こと、蛍だった。おい、あいつもハンター志望なのかよ?
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四次元探偵 aisu @ghosteastshopbakaure
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