第3話 初めての推理

 普段は各自に課題を与えてそれをテストするらしいが、今日はシュミレーション室で講義するらしい。


「今日はE級ゲートを再現しました。この課題には全員参加してもらいます。わかったものは積極的に発表すること。いいですね?それでは始めます。」


 ゲートには階級があって、一番低いものからE級、D級、C級、B級、A級、そしてS級がある。現在世界一位のハンターはSS級だけど、SS級は一人だけなので、実際はS級までだろう。今回はE級だから、難易度としては一番下だ。おっと、そろそろ始まるな。俺はゴーグルを頭につける。すると、座っていた椅子が俺をスキャンして仮想空間へとつなげる。……なんだこれ?全く違和感がないじゃないか。仮想空間へと入った俺たちは不思議な館の前に来ていた。中世の貴族を漂わせる館からは特に何も感じなかった。それ以上に雪も積もっていて寒さがすごかったからだ。俺たちはすぐに館の玄関に向かって歩いた。カラン♪カラン♪鐘を鳴らすと、館の執事らしき人が出てきた。


「はい、どちら様でしょうか?」


 一人の生徒が話し出す。

「私たちは旅のものです。よろしかったら泊めていただけないでしょうか?」


 すると執事と思えるお爺さんは申し訳なさそうに言う。

「申し訳ありませんが、今は大変困った状況でして客人をとめる余裕などないのです。」


 すると先ほどと同じ生徒、面倒なのでここでは金髪君とでも呼んでおこう。金髪君が話す。なんだかよくしゃべるやつといった印象だ。


「それならば、その困ったこととやらを我々に解決させてはいただけませんでしょうか?これでも腕には自信があるのです。」


 お爺さんは少し悩んだ後、渋々といった様子で許可してくれた。

中に入って事情を聴くとどうやらここで殺人事件が起こったらしい。館のみんなを集めてもらって話をすることにした。


「つまり、みなさんは午後3時にここに全員集まる予定だったというわけですね。そして、この館の主である伯爵が一時間ほどしても来なかったからメイドさんが様子を見に行ったら死んでいたと。」


 頷く執事。俺はメイドさんに質問する。

「その一時間の間にだれか部屋を抜け出た人はいましたか?」


「はい、いました。そこの執事さんは奥様の紅茶を淹れに、騎士様は外の見回りにと言ってここを離れられました。」


「なるほど、それでは現場を見せていただけないでしょうか?」


 俺たちはメイドさんに殺人現場である執務室に案内してもらう。

執務室につくと、現場の状況について執事が話してくれた。


「まず、カギは室内の棚にしまわれていました。そしてメイドさんがここに来たときは鍵が開いていたようです。そして遺体を見るに死因は鈍器で殴られたといった所でしょう。」


 すると金髪君が口を開く。

「つまり、死亡時刻は午後3時から前かそのあとの一時間なのかわからないってことか?でもよ。こうは考えられねえか?メイドがカギを使って部屋に入り、棚に戻した。そしてそのときに殺した。」


 俺は室内を見渡す、被害者の周りには何も荒らされた跡などなかった。そして、指先もまだ硬直していない。つまりまだ5時間は経過していない。


 騎士は自分は雪の上を歩いていたというが、その足跡は俺たちが歩いてきたことによって消えてしまったのでアリバイはないという。執事は紅茶を作るときにポッドを使ったから、まだ温かいはずだと言っており、メイドは被害者の妻と一緒に部屋にいたという。さらには、妻は逆に俺たちが殺したのではないかという始末。さてどうしたものか。


「それじゃあ、犯人は騎士だ!アリバイが消えたのは俺たちのせいだが、やったのは俺らじゃねえし、現場が荒らされていないところを見るに、犯人は一発で殺人を実行したんだろう?でも、そんなことができるのはこの中には騎士しかいねえ。」


 騎士は必死に自分は違うというが、いったいどうなのか。まだ、騎士がやったと決めるには早いだろう。ひとまずもう一度現場を確認しよう。もしかしたら何かがわかるかもしれない。


「みなさん落ち着いてください、ひとまずもう一度現場を確認しましょう。」


 俺の一言で現場に向かうことになったのだが、やはりよくわからない。現場に戻ったわたしは指先が硬直していることに気付く。まさか……。


「奥さん、執事さんと、騎士様が部屋に戻ってこられたのはいつ頃でしたか?」


「わかりませんが、確か5分くらいで戻ってきました。」


 なるほど、なぞは解けた。わかったぞ、この事件の犯人が!

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