第4話 対抗

翌朝、高橋は早朝に出勤し、河野の政策案を再度精査した上で、独自の反論資料を準備することを決意した。その資料には、河野の計画が抱えるリスクと、それを回避するための代替案を詳細にまとめることにした。これを作成することで、上層部会議でこの政策の問題点を明らかにし、会議で審議される前にこの政策案自体をなかったことにすることができるかもしれない。高橋はこの対抗策にかけるしかなかった。


高橋は部下の田中を呼び出し、協力を仰いだ。田中は部内で数少ない高橋の理解者であり、河野の横暴に疑問を抱いている一人だった。事情を説明すると、田中は快く協力を引き受けた。


「河野さんの計画が通ったら、国民が困るだけじゃなく、国土交通省そのものの信用にも関わる。全力でサポートさせていただきます。実は、私の実家は運送業を営んでいまして、もし、こんな政策が出てしまったら...と思うと、他人事ではいられなくて。」

田中は熱心な目でそう言った。


「ありがたい。こんなことに付き合わせて本当に申し訳ないが...どうか手伝ってくれ。」


高橋は、未来ある優秀な部下である田中を、このような危ない橋にのせたくなかった。しかし、5日後に迫った上層部会議を考えると、誰かに協力を仰ぐしかなかった。快く引き受けてくれた、田中は高橋にとってこれ以上ない救いであった。


「まずはデータの引用元の信ぴょう性と、この政策案を実施した際の国民に対する経済効果について調べよう。」


その後、3日間かけてデータの信ぴょう性を調査したところ、政策案に示されているデータのうち、およそ半分のデータが扮飾されていることが発覚した。しかしながら、扮飾の事実確認を関係各所に連絡し、全て完了させる時間は高橋と田中には残されていなかった。政策案を施行した際の国民に対する経済効果も国庫への収入を考えれば上層部が問題にしないことは明らかであった。


「くそっ。これでデータの扮飾の事実確認さえできれば、河野さんの政策案は絶対に止めることができるのに。」

田中は悔しそうにそう言った。


「今から別のアプローチは難しい。少しでも多くの扮飾を明らかにして会議に臨もう。」


その後、事実確認を高橋と田中で協力して進めたものの、完了できたのは扮飾されたすべてのデータのうち、およそ2割であった。

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日本縦断中央鉄道 刻松亜紀 @AKIKOKU

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