第3話 上層部会議への提出
会議が終わってすぐ、高橋は河野が提案した政策案の確認を進めた。
「なんだ、これは。」
その計画は一見すると国庫の財政的な負担を軽減するように見えるが、実際には国民生活に多大な影響を与える欠陥だらけのものだった。主要国道を有料化することで物流コストが上昇し、物価高騰を招くだけでなく、地方の交通インフラが麻痺する可能性が高かった。さらに、計画の裏付けデータには、明らかに不自然な箇所が散見された。
「引用先が不明瞭すぎる。しかも、この政策案が通っても喜ぶのは財務省だけじゃないか。国民には負担を強いるだけだ。」
高橋はすぐに河野のデスクへ向かった。
「河野さん。なんですか、この政策案は。引用元のデータが不明瞭なばかりか、この政策案を通して、国が良くなるものだと、お思いですか?我々は、国土交通省です。国道という、日本の大動脈の一つをこのような形で潰してどうするのですか。」
河野は少し気まずそうに返した。
「高橋くん。引用元のデータが見つけられないのは君の力不足ではないか?そもそも、国庫の財政的負担は言われて久しく、各種交通インフラ維持のための補助金の財源として、この政策案は大いに意味あるものだと私は思うがね。」
高橋はすかさず
「財源など、現在の各種税率を考えれば、いくらでも捻出できます。例えば、海外への投資を一部削減すれば数億円の金がすぐに用意できるはずだ。あなただって、わかっているはずだ。」と返す。
しかし、河野から返ってきた言葉は、高橋の予想の上を行くものだった。
「まぁまぁ、落ち着いてよ高橋くん。この政策案はね、もう上に通したんだよ。」
高橋は唖然とした。
「どういうつもりですか。これでは、独断どころか横暴です。もし、この政策案に不備があったら、あなただけの責任だけではすまない。私どころか、この部署全体の責任となる。そうなったらどうするおつもりですか。」
河野は立ち上がって、満面の笑みで返した。
「全責任は私が取る。これで良いかね、高橋くん。」
そんな言葉で片付く問題ではない。もっと地位を上げたい河野にとって、こんな不確定な勝負に出るのは、それ相応の何かがあるはずだ。高橋は、それを暴かねばならないと強く感じた。
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