第6話 知りたいもの 出発する2人
客間にて祐吉、祐吉の母親、ウォル、そして海藤の4人が集まった。
「お茶をどうぞ〜」
「ありがとうございます」
祐吉の母親は丁寧にお茶を用意してくれた。俺とウォルにはオレンジジュースを目の前に置いてくれた。ウォルは手枷で見てないのでストローで飲んでいた。
海藤はお茶をずずず…と飲んだ後に話を始めた。
「その子のことについて聞きたいんですよ」
「ウォルのこと…ですか?」
「んー…?」
ウォルはジュースを飲みながら祐吉を見つめ返す。
「あなたたちはその…ウォルの正体を知っているんですか?」
「俺は…海辺で倒れてたのを見て助けて…それからウォレイルズというロボットに乗らされた…ぐらい…」
「ふむふむ」
海藤はタブレットで熱心にメモをしている。
「あぁ、ウォルちゃんはね、なんか…人間じゃないみたいなんですよねぇ」
「えっ!?」
祐吉の母親から驚きの言葉に声を出す。普通の外国の少年で電気を流す体質を持った子だと祐吉は考えたのだ。
「そう、そうなんですよ!この子は人間じゃなくアンドロイドかサイボーグの可能性があります!!」
海藤はウォルに指を指すがウォルは疑問符を浮かべた顔をしていた。
「母さん、何でわかったの…」
「服を脱がして体を拭いてあげたときにね、手足の関節部分が機械のような物だったりどうしても外せないところがあってもしかして…と思ったのよ。ゆーちゃんも昔ワンちゃんやネコちゃんを拾ってきたけど、そうきたかぁと思っちゃったわけなの」
「なんでそれを先に言ってくれなかったの!?」
「ゆーちゃん!ゆーちゃん!」
ウォルはゆーちゃんという呼び方を真似して連呼している。「ごめん、恥ずかしいからやめてくれ」と祐吉は必死に止める。
海藤は少し笑いながら話を続ける。
「ウォルには現状の技術では完成出来ないレベルなのに存在する。だから直接聞いたのですが、知能が低学年レベルなんですよね。何度問いただしても祐吉さんに助けを呼んでいるだけでした」
「俺を?」
「ユーキチ♪」
ウォルは祐吉膝に乗っかり始めた。「あらあら仲良しさんね」と笑う祐吉の母親。
海藤はタブレットを操作し祐吉に見せる。
「鍵はこれにあると思うんですよ」
そこに映っていたのはウォレイルズと飛行体と戦っている時の動画…のようだがノイズが多くて見にくい動画だった。
「SNSで動画を投稿していた方がいましたが、まともに撮影出来ないという事はこのロボットか謎の飛行物体か、それとも両方に何かがあるんですよ」
祐吉自身もウォレイルズのことを知りたいと思った。ウォルのことも。だから可能な限り海藤にどんな事があったかを説明した。
ウォルと一緒にウォレイルズに乗った事。ウォルは最初言葉が通じなかったが、乗った後は話せるようになった事。座っているだけで脳内にウォレイルズの技が思い浮かんだ事。ウォルと魂が重なったかのような感覚になり相手を倒した事。相手は爆発せずにノイズが走って消えてしまった事。戦った後に疲労を感じ、ウォルがぶっ倒れた事……。
話している間にウォルは寝てしまった。
「ふむふむ…だとすれば、だ」
海藤は祐吉の話から何かを決めたような顔をする。
「祐吉くんとウォル、君たちは東京本部のエレクトマーズに来てもらいたい!」
その事を聞いて祐吉は母親を見て。
「そ、それは母さんを1人ここに置いてってしまうし、俺にも一応バイトもあるから…」
「バイト代の代わりに研究を手伝って貰った分給料を出すよ…お母様に関しては…」
「ゆーちゃん、私は大丈夫よ。行ってきなさい」
祐吉は危ないからダメだとか1人は寂しいと言うと思っていたが、違った。まるで大丈夫だからとにこっとしていた。
「ウォルちゃんはゆーちゃんがいないとダメじゃない?まるでお兄さん大好きな弟みたいで…それに、ロボットさんに乗って戦える強い子でしょ?」
「母さん…」
「お母さんも仕事はバリバリ出来るから気にしなくていいわよ?その代わり、ウォルちゃんと連絡をしてくれたら嬉しいなぁ」
「………わかった」
「では決まりですね。引越しの荷物運びと学校の転入手続きは私たちがやっておく。しばらくはお母様と一緒に過ごしてくれ」
「………はい!」
祐吉は母親と別れることなる。いつ帰るかわからない…無事に帰ってくるかわからない…。
そんな不安の中に祐吉の母親がウォルを含めて優しく抱きしめる。
「あなたは大丈夫よ…ウォルちゃんと一緒に頑張って。天国のパパも見守っているはずだから…」
「うん…うん…」
祐吉の父親は幼い時に不慮の事故で亡くなった。1番辛い思いをしたのは母親のはずなのに自らその事で励まそうとしてくれた。祐吉は絶対にここに帰ってくると心の中で誓った。
出発の日が来た。大きな荷物は新しい家に、転入先はに決まっていて、ウォレイルズはすでにエレクトマーズ社に搬入されている。外には移動用の車が用意されており途中で飛行機に乗る事となっている。
祐吉とウォルはこれからエレクトマーズ社へ向かう。
「気をつけて行ってくるのよー」
母親が玄関で見送り手を振る。
「大丈夫だって!ウォル、車や飛行機の中は大人しくすること、覚えてるか?」
「うん、ウォル!良い子にする!」
「それならよし!」
祐吉の母親は思った。もし本当に2人目の息子がいたらこんな感じだったのかしらと…。
祐吉とウォルは母親に向けてこう言った
「「いってきます!!」」
「…いってらっしゃい!」
2人は車に乗り込み東京へ向かうのだった。
その後、ウォルが様々な事を学習する、ウォルとウォレイルズの謎、新たな武器を得る、そして謎の敵勢力が現れ激闘を繰り広げていく出来事はまた別の話……
機鋼双流 ウォレイルズ きいろいの@入院などでお休み中 @kiiroino
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