第5話 監視するもの 拘束されるもの

 数時間後、祐吉は家に戻って夕食を食べていた。


(あれから俺は変わっていることが3つあることがわかる。1つは俺の右手に痣が出来た。ウォレイルズに乗ったせいなのだろうか。2つ目は食卓の席が1つ増えていること。ウォルの席だろうけど、どこにいったかわからない。3つ目は…俺らの周りに自衛隊員を囲むように見張っていて部屋が滅茶苦茶狭く感じることだ)


「皆さんも食べますかぁ?」

「いえ、お構いなく」

「あ、お仕事中でしたか?ふふっ、お客さんがたくさん来てくれたみたいねぇ」


 祐吉の母親は今の事態に気にすることなく食事を続けていた。逆に祐吉は変な動きをすると何されるかわからないと思い冷静を装っていた。

 玄関の奥から声がする。


「ユーキチー…」

「ん!?ウォルか!?」


 声に反応して席を立ち上がるが自衛隊員全員がジッと見ている。祐吉は大人しく席に座った。


 しばらくして他の自衛隊員が頭と足以外を拘束したウォルを食卓に連れてくる。硬そうなテープのようなものや大量のベルトを巻かれて複数のロープを各隊員が握っており逃げられなくしている。まるで処刑されるのではないかと祐吉は不安になった。


「あらウォルちゃん、悪いことしちゃったの?」

「してないー、ウォル…してない…」


 ウォルは涙目で訴えかけた。しかも疲れたような声で倒れてからあまり休めてないのだろう。


「ウォルは悪いことしてないです!あの…ロボットで飛んでたやつを倒したし…俺も乗っていました!俺にも責任があります!!」

「ユーキチ…」


「この子を責めてないよ。むしろ興味対象なんだ」


 声がした方向から白衣を着た男が入ってきた。


「あなたは、誰ですか?」

「どうも、エレクトマーズ社の海藤かいとう進矢しんやです」


 エレクトマーズ。主に東京を拠点に大型ロボットを研究、開発をしている有名な会社だ。


「偶然の街でテストしていたところ謎のロボットが現れたと聞いて駆けつけたのさ」

「あのぉ…それよりも…」


 祐吉の母親が話を遮るように話しかける。


「こんなに人がいっぱいですと…狭くて困っちゃいますが…」


 確かに食卓の部屋に大人が十数人いると狭い。


「すまないね、あとは私が話をしておく。あとこの子の拘束も最低限まで外してやってくれ」


 自衛隊員はわかりましたとウォルの拘束を外し始めた。テープの下は硬そうな布を覆っていたのでナイフで切っていた。これが直でテープを貼っていて剥がしたら痛いだろう。ウォルの拘束は手枷だけになり、自衛隊員たちは撤収し始めた。海藤って人はどれだけ偉い人なのだろうと不思議に思う祐吉だった。



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