第4話 2つの魂を重ねるもの

「いや、ウォルが乗るならまだしもなんで俺まで!?」


 突然のロボットの搭乗に困惑する祐吉。座席シートにはベルトががっちり締められ、両手には操縦桿のようなものを握っている。


「ウォレイルズって言うのか?」


 と前にいるウォルに話しかけた直後、謎の飛行体が不協和音を出しながらこっちに急接近し始めた。搭乗しているロボットの目線は飛行体に向けられる。


 ファァゥゥウォォオオォォァァ…


「うわ!こっちに来た!?」

「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎…ぁー……◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎?!」


 ウォルは飛行体に対して何かを言ってるようだが、言語がわからない。何かを知っているのかそれとも…?


「ユーキチ!◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!」

「いや、わからん、さっぱりわからん!」


 祐吉はウォルに対して首を横に素早く振った。

 ウォルは謎のスクリーンを出して喋り出す。


「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎……ち、ちきゅう!………◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎…?……ぅー…!…にほんご◾︎◾︎◾︎!!」


 すると数多くのスクリーンが現れてゲージが表示される。その隙間に飛行体が巨大なコードのような物をこちらへ伸ばしてきた。


「ちょっ!危ない!!」


 祐吉は叫んだ瞬間、ウォルは回し蹴りをした。それと同時に乗っているロボットも回し蹴りをし、敵のコードは蹴飛ばした。

 そして祐吉は不思議な感覚を覚える。


(あれ、なんでだ?回し蹴りをしたのに、俺もその動きをしたかのように感じた…)


 全てのスクリーンのゲージがMAXになり前がよく見えるようになる。ウォルは祐吉に対して話し始めた。


「ユーキチ、これ、ウォレイルズ、ウォルのろぼっと!」

「ウォル!?え、喋れるようになったのか?」

「ユーキチ、いっしょ、たたかう!いっしょ、そうぞう!ウォレイルズ、まけない」

「片言で怪しいけど、俺が乗る必要が…」


 飛行体が光を放ち2人の会話を阻害する。

 その刹那、祐吉はあるものが頭の中に過ぎった。


「…光掌壁!」

「コウショウヘキ!!」


 祐吉が叫ぶとウォルが復唱し左手の掌に白い魔法陣を展開して相手の攻撃を防いだ。


(なんだ…俺の手の感覚は…何かを押さえたぞ!)

「ユーキチ、はんげき!なんでもいい!!」


 祐吉はハッと返った。


「何か武器はないのか?剣とか銃とか」

「ぶき!なし!」

「じゃあさっきの魔法陣が出るやつで」

「まほうじん、ほのおのうず!」

「もっといい名称が」

(待てよ?日本語ではないのに変えられるのか…?)


 祐吉はほのおのうずから別の単語をイメージした。すると頭の中に技名らしきものが過ぎる…。


「よし、ブレイズボルテックス!」

「ブレイズボルテックス!!」


 右手から赤い魔法陣が出てきて巨大な炎の渦が飛行体に直撃する。数本あったコードが延焼し始めて飛行体は海へと移動し始める。


「見た目がクラゲっぽいから移動されると困るんだけどなー」

「ウォル、ユーキチのそうぞう、理解した!」


 なんの予兆もなく祐吉の頭の中に過ぎる。


「ブラストレーザー!」

「ブラストレーザー!!」


 ウォレイルズの額から強力な光線を飛行体に当てる。当たった部分は高熱で赤く変色している。


「あとはあそこに強力な一撃を当てれば」

『そう、今ならあの技が出せる!』

「えっ!?ウォルなのか?」


 祐吉は流暢に喋り出すウォルの声が頭、いや、心の中で聞こえてくるのだ。まるで自分自身にウォルの魂が入ってきたかのように。


『今の祐吉にもあの技が刻み込まれている。一緒にやろう!』

「…わかった。絶対にぶっ倒すぞ!」

「ウォル!ユーキチといっしょに!」


 片言を喋るウォルに戻った。しかし、2人が出す技は決まっている。


「「ライジング……」」


 右手の拳から強い光を放ち背中のブースターを強くふかし始める。複数の魔法陣が敵に向かって複数展開される。


「「ブレイカァァァァァァァァ!!」」


 拳を突き出し展開された魔法陣を一つ、二つ、三つ、…と拳にぶつける。ぶつける度に拳に強い電流のようなものが流れていく。

 そして飛行体に直撃する。そしてこのまま止まらず装甲をぶち抜き内部で天に向けて拳を突き上げ粉砕し内部から脱出した。


「はぁはぁ…やったのか」

「うー…」


 無我夢中でやっていた2人は疲れていた。それでも飛行体はいったいどうなるのか見届けようとするとノイズが走ったかのように消えていったのだ。あれは何だったんだろうか…。



 海辺でウォレイルズは膝をついて着陸する。2人降りるためにコックピットハッチが開く。「いや開くんかい!」とツッコミながら祐吉は降りた。ウォルも降りたのだが。


「うー…だめー…」


 と倒れてしまう。


「ウォル!?大丈夫か!おい、しっかり、って痛っ!?」


 倒れたウォルに駆け寄った祐吉がウォルを起こそうとすると両手に静電気を触ったような痛みがあった。…よく聞くとウォルからバチバチッと音が出ていて、身体中に電気が流れているように見える。


「あー!近くにゴム手袋が落ちていればー!」


「動くな!!」


 その声を聞いて祐吉はびっくりする。気づけば自衛隊員が銃をこちらに向けて構えている。撃たれると思い黙って両手を上げるしかなかった。


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