4-2 試練の開幕② 真なる夫婦の会話
〈※本編の会話劇にこれより書かれる❤️記号は、この血で血を洗う現代社会において、我々同時代人を理解し合えない者から、理解し合う者へと唯一変革せしめる可能性を秘めた高難度のコミュニケーション技術、【真なる家族の言葉】又は【愛の言語】と呼ばれるものになります。〉
⚪︎
❤️ぷ〜〜〜。ぷっぷ❤️
(訳:ハト、誤解しないでくれ。何も私はお前に義務感を押しつけて家事をしろと言っている訳ではないんだ。こう言っては何だがね。お前にはいつも‥‥‥。まあ、いい機会だ。言っておくか。コホン)
【ハト】:
「くっさい。誰かタスケテーー! 夫のオナラが絶望的にくっさいのーー!」
❤️プップップ、プップップ❤️
(訳:‥‥ハト。いつも家事を頑張ってくれてありがとう)
【ハト】:
「そっちがその気なら、こっちはファブリーズかけてやる。ダメ、効かない。押し返される。くっさいのーー!」
❤️プピ、プップ❤️
(訳:ハハハ、畏まって言うと、なんだか照れるな)
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私は改めて妻に感謝の言葉を伝えた。普段から心には思っていても、やはり実際に言葉にして伝えなくてはいけないな。生来の武骨者とは言え、こういう時にまで粗野になってはいけないと今更ながら反省するよ。本当に不器用な人間ですまない。‥‥それでな。もう一つお前に伝えたい大切なことがあるんだよ。あー、まあ、言い訳をすると、誰とも知れない誰かに、ちょっとお前への愛を示さなくていけないらしくてね。あー、えーと。ははは、いやー、参ったぞ。これは本当に照れてくるな。ははは‥。
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※以下おなら省略。
※台詞名称【ハト】省略。
❤️(コホン。私たちが結婚した時は何かと忙しかったからな。それでなんだかんだとあって有耶無耶になってしまっていて、その言葉を言うべき旬が過ぎてしまったとうか、まあその、いい歳をしたおっさんおばさんが年甲斐もなく世間の若いカップルがするような真似事をするのは、なんだか恥ずかしくて言わなかったんだ。それに私たちの間柄であえてそれを言葉にしてしまうのも陳腐だと思ってもいたのだがね。はは、少し考え直したよ。やはり思いは実際に言葉にして伝えなくてはいけないと思ったんだ。あー、それじゃ、この辺りで前置きはいいかな。よし、言うぞ。コホン。‥‥‥‥えー。あー。ははは。やっぱり照れくさいな。もうちょっとだけ言い訳をさせてもらうと、言おう言おうとはずっと思ってたんだよ。本当だよ。でもその度にこんな風にまごついていたら言う機会を失ってしまってな。私たちは見合い結婚で、お互い結婚前からいい意味で割り切って付き合っていたから、甘いとか酸っぱいとかの話もなかった。結婚式も挙げなかったし、結婚してからも諸々忙しかったろ? あー、それはさっき言ったか。だから、その、まだ正式に一度も言葉にして言えてなかったと思うんだよ。ははは、なんだか本当にいい訳ばかりだな。‥‥とにかくだ。––––その言葉を、いま言うよ)❤️
「くっさくっさ、しつこ! やめないさいよ。ほんと怒るわよ! えいっえいっ!」
❤️(ハト、聞いてくれ。私はお前を愛–––––––)❤️
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‥‥ん、どうした? 妻の様子がおかしい。なぜ怒り狂って私の尻を叩きまくっているのだ? ハハハ、まるで私が言っていることが、何も通じていないかのような鬼っぷりじゃないか。両掌で怒涛連打の如く尻を太鼓にしている。どうしてそこまで憎しみを込めて叩けるんだ。‥‥‥おい、まさか、本当に通じていないと言うのか? 私の妻が、私の言葉を‥‥‥?
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❤️(なあ、ハト。面白い冗談はやめてくれ。お前がまさかそんな筈はないだろう。私が何を伝えようとしているか察せられない筈はないだろう。あー、さては愛の告白を受けることを察して恥ずかしがっているのか? お前もとうに乙女という年齢でもあるまいに、しょうのない奴だ。ハハハ‥‥。)❤️
「それ以上、こいたら離婚だから! えいっえいっ! コンニャロ!」
❤️(‥‥もしや本当に照れているのか? そうでなくてはおかしいじゃないか。私とお前の仲だぞ。何年夫婦をやっていたと思っているんだ。‥‥あー、そうかそうか。いい歳した親父がモジモジしながら告白してくることが、そんなにも気恥ずかしいのか‥? なあ、そうなんだろう‥‥? 照れているだけなんだろう? ‥‥‥‥‥ハト?)❤️
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私は妻へ自分の意思が伝わっていなかったことに薄々と気づいてしまった。それは私たちは屁で意思疎通ができる至高の夫婦ではなかった事を意味する。その事を認めたくないばかりに、さらに自棄気味にコミュニケーションを続ける。それでも妻は私の声に応えてはくれなかった。自信の喪失と共に言葉尻は徐々に弱くなってゆき、ついに私は黙り込んでしまう。
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(‥‥‥‥‥)
「あら、やめてくれたのかしら?」
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それでも信じたかった。長年連れ添い、共に苦労を分かち合ってきた、私にとってのたった一人の女性にならば、–––心を込めれば、–––想いを力の限り込めさえすれば、–––必ず伝わってくれると信じたかった。
だから私は、––––––
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❤️(ハト、愛しているよ)❤️
「くっさ! 今日一番で強烈にくっさ!」
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愛を告白した。
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❤️(‥愛しているよ。なあ、あの柱の時計をいつ買ったか覚えているかい? 新婚の時、安売りの家具屋でお前が何気なく指差したものだったけど、あの時から私たち夫婦と同じ時を刻んでいるね)❤️
「くっさ! もうダメ! もう無理! あなたのおならの臭さとはやっていけません。もう離婚よ!」
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伝わらない。伝えることができない。
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❤️(‥愛しているんだ、ハト。‥‥分かってくれ)❤️
「このDV親父! うんこ親父!」
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ああ、遠ざかってゆく。
私の愛した者が、この手から。
何も伝えることができずに、
愛しい人が遠ざかってゆく
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❤️(‥‥愛している)❤️
「コンニャロコンニャロ! 尻にゴキジェットかけてやる」
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だが、私は諦めきれなかった。
こうなったら少々暴力的でも構わないと
残された腹の中の思いを一気に放出して、
私は妻に縋ったのだ。叫んだのだ!
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❤️(ああ、そんな。嘘だ! 聞いてくれ。ハト。愛しているんだ!)❤️
「きゃああああ! 夫におならで殺される! 誰か誰かタスケテーー! スズメーー! お母さんをタスケテーー!」
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あ、ちょっと、出ちった。
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※おまけ。
『おなら省略なし、訳なしバージョン』
ぷ〜〜〜〜
ぷっぷ
「くっさい。誰かタスケテーー! 夫のオナラが絶望的にくっさいのーー!」
プップップ、プップップ
「そっちがその気なら、こっちはファブリーズかけてやる。ダメ、効かない。押し返される。くっさいのーー!」
プピ、プップ
プププ、ププププ、ププププ
プププ、プーププ。
プップププ〜♪
「くっさくっさ、しつこ! やめないさいよ。ほんと怒るわよ! えいっえいっ!」
ププププープ?
ぷーーーー?
「それ以上、こいたら離婚だから! えいっえいっ! コンニャロ!」
‥‥‥‥‥。
「あら、やめてくれたのかしら?」
ぷーーーーー
「くっさ! 今日一番で強烈にくっさ!」
ぷぷぷ
ぷっぷーーー
「くっさ! もうダメ! もう無理! あなたのおならの臭さとはやっていけません。もう離婚よ!」
ぷーーー‥
「このDV親父! うんこ親父!」
ぷーー‥‥
「コンニャロコンニャロ! 尻にゴキジェットかけてやる」
ブッ、ブブブブブ!
ブヒブヒブヒ!
ブピッ!
「きゃああああ! 夫におならで殺される! 誰か誰かタスケテーー! スズメーー! お母さんをタスケテーー!」
『実録DV事件 悲劇の妻は何を見たのか』:裁判所未提出記録より。
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《これ暴力だよな? だよな? ギャギャギャ、なんて酷いDV親父なんだ!》
「先輩、どうするの? コレ?⭐️」
「うーん」
《よっしゃー! このジジイ。こっちが何もしてねーのに、仕掛ける前に勝手に自滅しやがった。ヒャヒャヒャ! それもオレ様が罠を仕掛けて狙おうとしていたところにピンポイントだぜ。ヒヒヒ。笑いがとまんねぇ〜。アホの免停暴走ジジイがよ。自分から突っ込んで事故ってきやがる。キヒヒヒヒヒヒ。慎重によお〜。念入りによお〜。攻めようとしていたのによお〜。手間が省けたぜ〜。ヒャヒャヒャ!》
「先輩、先輩⭐️」
「開幕早々ですが‥‥。うーん。ちょっと今までで見たことのないパターンですね」
《誘惑ぅ〜、チャーンス! つけ込み♪つけ込み♪》
「勝ってるの?負けてるの? よく分かんない〜⭐️」
「うーん‥‥。あ、これ、いきなりピンチかもしれません」
「ほんと?⭐️ ヤッバイじゃん!⭐️」
《誘惑ぅ〜♪ 誘惑ぅ〜♪》
「あ、あいつ。ウキウキで仕掛けに行っちゃった!⭐️」
「しかし狙いはわかりましたよ。恐らくこの戦いで、あの誘惑者が力として選ぶのは、呪われし大罪が一つ、【憤怒】になるでしょう。我々も行きますよ。試練はここからです」
「らじゃ⭐️」
「波乱のスタートになりました。気を引き締めて下さい」
「波乱というか、なんかグダグダな感じで始まっちゃったね⭐️」
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