#6「最初のモンスター」

「イスメルさんって、なんで吟遊詩人になったんですか?」

「単純な話だ。自分が一番惹かれたものが音楽だった。俺はそれを生業としてるだけだ」

 好きなことを生業と出来るのは正直言って羨ましい限りだ。

「いいじゃないですか。私なんて画家ですよ? この色のない世界で、画家を目指してるんです」「だから色を取り戻す、と息巻いていたわけか」

「……色を取り戻した世界を、正直私は知らない。追求したいと思うのは、さがですよ」

 勿論、途方もない旅になるだろう。けど、私は諦めない。

「立派なもんだ。火魔法以外も使えればなお良かったんだがな……」

「む……そ、それはこれからじっくり勉強すればいいんです!」

 そうだ。勉強なんて機会があればいつでも出来る。最初の街に着いたら、学び直しをしてやる!

 はた迷惑な魔物には違いないけど、色を奪う以外のことをしてはいない。つまり、人の命を奪ったわけではない。

「ははは!」

 不意にイスメルさんが笑った。今まで無表情の彼しか見たことがなかったから、なんだか新鮮だ。

「ど、どうしたんですか?」

「いや何……愉快な奴だと思ったまでだ」

「馬鹿にしてます?」

「してないさ。その楽天を心底気に入ったまで」

 ……なんだか褒められてるのか貶されてるのか分からない。

 そんな他愛もない話をしていた時、不意に斧が空を切った。

「危なっ!」

 キラーラビットだ。よし、火魔法で倒せる!

「火の加護よ……」

「ふんっ!」

「え?」

 どこからか取り出したこん棒をキラーラビットに的中する。瞬殺だった。ドロップアイテムと銅貨三枚が姿を現す。

「行くぞ」

「え、えぇ……?」

 ……この人、なんで吟遊詩人なんだ?

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