#4「広い草原」

 フィオナの街を出て、私は草原を歩く。

「……やっぱり、色は欲しいな」

 まず、最初に抱いた感想はそれだ。確かに、見慣れたフィオナの街と違い、見慣れない風景ではある。

 ただ、この広い草原も色がないので味気ない。モンスターは……火属性のモンスターと出くわしたら真っ先に逃げる!

 火魔法以外使えないというのが、どうにも無計画だったとは思う。猛省。

「ん?」

 近くから弦楽器の音色が響く。私はその音のする方へと足を進めた。

 トンガリ帽子に大きな弦楽器――確か……リュートとか言ったっけ?――を抱える青年。吟遊詩人というのは線の細いイメージがあったけど、なかなかどうしてこの彼は高身長かつ、ガタイは良いほうだ。どうやら、演奏に夢中でこちらには気づいてない様子だ。

 そろりそろりと近づく。旅は道連れだ。仲間は一人でも多い方がいい。演奏が止まるのを待ち、私は声を駆けようとした。すると、吟遊詩人は呆れた様子で溜息を吐く。

「……あまりまじまじと見られても困るんだが」

「え、あ、すみません。気づいてましたか!」

 てっきり気づいていないものだと思っていたけど、まさか察知されていたとは。

「……そりゃ、あれだけ気配があったらな。で、お前の名は?」

「……リンダっていいます。貴方は?」

「イスメルだ。ところでお前、武器は?」

「えっと……火魔法だけです」

「火魔法だけか? 無謀だな……せめて杖は?」

「この道端で拾った棒切れだけです。舞い上がっちゃって、武器を買うのを忘れてしまって……」

 そう。こともあろうに私は、武器を買わずに街を飛び出してしまったのだ。誰か突っ込んで欲しかったが、悩んでも仕方がない。私は頭を下げ、イスメルさんに頼み込む

「出会って早々申し訳ないんですけど、仲間になってくれませんか?」


 

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