#3「旅立ちの日」
あれから、三年の月日が流れた。
十五歳。めでたく成人になった私は、防具と便箋、冒険者証、それと十分な薬草を装備し、旅立ちの準備をする。
Dランクの要項を満たした私は成人とともにDランク冒険者へと昇格した。その際、冒険者証は身分証明書として各地で互換性があるから、必携なのだ。
魔術は、とりあえず火の初級魔法を使えるようにはなった。絵は独学で描き続けていて、かなり上達した。
お母さんが私を見送る。三年の月日は経ったが、お母さんはあんまり変わってない。
「リンダ、やっぱり行くのね……」
「うん。三年前も言ったけど、色を取り戻したいって想いは変わらないよ。お母さん」
女手一つでここまで育ててくれて、外の世界に行くことに理解を示してくれたお母さんには感謝しかない。
「……あんなにちっちゃかったリンダが……大きくなったわ」
感慨深くそう呟く。
「うん……なんか、あっという間だね」
月日が流れるのは、遅いようで早い。私ももう一人で暮らしていける年になった。選んだ道は茨かもしれない。けど、その選択に、後悔はない。
「……行ってらっしゃいリンダ。気をつけてね」
「うん。行ってきます」
今生の別れではない……と思いたい。ただ、色を取り戻すための旅路がどれほど遠いのか、それは分からない。旅先では手紙を出そう。高位魔法ならお母さんとのやりとりは随分と楽になるんだけど、生憎とその心得はないから。
私は期待と不安を胸に、フィオナの街を後にした。
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