第二話 貰ったギフトはクソでした(後編)

「冒険者なんてなりたくねぇよ。」

この世界において冒険者は最底辺職とされている。給料は出ないし命の保証もされていない。

「はぁ,どうしよ。」

試しにそこら辺の草に贈り物ギフトの力を使ってみた。しかし,草は伸びて成長するだけ。こんな力,ぶっちゃけ意味ない。家を出た時に持ってきた荷物も,今思えば使えないものばかりだ。

「今日はあの村に泊まらせてもらうか。」

雪が降る夜に外にいると凍え死ぬ。最悪馬小屋でもいいから寝床が欲しい。と思い,村の中へ入るとおばあさんに出会った。

「おや,坊や。こんな日にどうしたんだい?」

「い,家出してきたんです。今晩泊まる場所が欲しくて。」

それを聞いたおばあさんは何も言わず,俺を家に入れてくれえた。


「へぇ,育成スキルなのかい。」

「でもそんな雑魚スキル,何の役にもたちませんよね。」

この育成の使い道,あるんなら教えてほしい。

「いや,最近育成スキル持ちの人が少なくなったから困ってたんだよ。」

「え。」


~~次の日~~

「はぁ,なんでこんなことやってんだろ。」

俺は早朝からスキルを使って作物を成長させていた。

「坊や,その奥まだ成長しきってないぞー!」

「え,あ,はーい。」

ほかの育成スキル持ちの人と作物を成長させる。めんどくさいからと言って広範囲にスキルを使うと一日動けなくなる。だから一つずつ,丁寧に成長させないといけない。

「はい,おつかれさん。」

そう言われアイスを受け取った。

「贈り物が嫌で家出とは大したもんだよ。」

「え?」

「私は育成スキルでいいと思った。だってのんびり生きたいんだもん。」

俺にアイスを渡した女性はニコニコしながら俺の横に座った。…風が頬をかすめる。久しぶりに空を眺めると,白い雲がぽつんと漂っていた。

「君,なんて名前?」

「ノスタルジアです。」

「…良い名前ね。私はエカルラート。よろしく。」

エカルラートはずっとニコニコしていた。アイスを食べ終わった俺はエカルラートのアイスの棒を回収し,ごみ箱に捨てた。

「ねね,ノスタルジア」

「なに?」

「冒険者にならない?」

…はい?俺と,君とでか?どっちも育成スキルだぞ?魔物モンスターが襲ってきたらどうするんだ。こういう奴ほどすぐフラグ立てて死んでいくんだよ。そもそも今日会ったばかりの人間とどうして冒険したいと思えるのかが不思議だ。

「や,やだよ。」

「そっか。じゃ,ノスタルジアがやりたいって思えるまで説得するね。」

やめてくださーい。…はぁ,どうしてこうなったんだ。

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