第三話 なけなし冒険者

それからエカルラートは毎日のように説得してきた。

「まだ俺は子供なんだぞ?無理だって。」

何を言ってもどこでもエカルラートはついてきた。本当に,どこでも。俺が飯を食べてても,シャワーをしていても。まだ出会ってから1週間もたっていないというのに。

「それなら大人になった時にここに戻ればいい。」

「そうだとしても死んだら意味ないじゃないか。」

エカルラートは何かを考えていた。それも嫌な予感がする。

「贈り物貰ったのならそれはもう成人なのよ?そんなことも知らないなんて。」

「…。」

エカルラートが言っていることにうそはない。本当に贈り物をもらったものはその日から成人と法律で決められている。これを決めたのは第二王女のプリベラー様。理由は早く大人になりたかったから…だそう。

「あーもうわかったよ。」

「やったあ!」

一週間だけでもやっとけばエカルラートの機嫌もよくなるだろう。いや,3日でもいいかな。まずはギルドで手続きをして,それから依頼を受けて…冒険者って色々大変なんだな。帰っても兄に笑われるだけだし。

「じゃあギルド行くぞ。」

「ぎるど…ってなに?」

エカルラートはきょとんとした顔で俺を見てくる。嘘だろ?嘘だよな。自分から冒険者になりたいって言ったのにギルドも知らないって…世間知らず過ぎるよ,エカルラート。

「ごめん,女の子に聞くのは何だけど…いくつ?」

「11だけど。」

まだ子供★俺より年下だった。けど贈り物をもらってるってことは遅生まれなのか。あんな田舎にいたから都会や世界を知らないんだ。

「え,冒険者って私は冒険者ですっていったら冒険者じゃないの?」

「違うよ。いろいろと手続きをしないといけないんだ。」

「へぇ,大変なのね。」

他人事みたいに言わないでください。本当に何も知らないんだな,エカルラート

って。俺はそんなエカルラートと一番近いギルドに手続きをしに行った。幸い,兄と剣術道場の加入手続きをしたことがあるからこういうのには慣れている。

「お二人ですね。…文字は書けますか?」

「俺は,大丈夫です。書けます。…エカルラートは?」

エカルラートは首を横に振る。

「分かりました。」

「じゃあ俺がこいつの分も書きます。」

そういうとギルド嬢らしき人は俺に契約書を二枚渡した。内容は普通で変なものは無い。これはサインしていい契約書だ。しかしギルドというだけあって紙が上質なものだ。さらさらしていて触り心地,書き心地が良い。

「はい,ノスタルジアさんとエカルラートさんですね。では,こちらの腕輪を。これはこのギルドの加入身分証明証となります。絶対に無くさないでくださいね。」

「はい。」

エカルラートは何もわかっていないようで頭にはてながいくつも浮かんでいた。まぁ,これは後で俺が分かりやすく説明するとして。どの依頼を受けようかな。

「すみません,この依頼受けてもいいですか?」

「はい,ではその腕輪の中に詳しい内容を送っておきますね。」

本当に便利だな。もう内容が送られてきている。初めての依頼は薬草の採集と魔物討伐。…さて,始めようか。

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