第2話 あなたは誰ですか?
被害者 荻野 真由 年齢 22
出身地は広島とあるので上京したばかりだったのだろうか。
遺留品から被害者の身元を証明するものは何もなかった。
「免許証も定期券といったものも未所持…ということは最寄りのコンビニかスーパーで生活用品を買っていたはずだ。被害者宅の徒歩圏内でそれらしいものは…」
地図を開いて探すとコンビニが二件、スーパーが一件あった。
「まずはコンビニから聞き込みしていきますか」
被害者宅から徒歩5分ほど歩いた場所にあるコンビニ。
ここは被害者がよく利用していたはずだ。そう今村には確信めいたものがあった。
「いらっしゃいませー」
「すみません。私、こういうものですが少しお話よろしいでしょうか?」
「え、ええ。構いませんがどうかされましたか?」
「実はこの女性が近くのアパートで殺害されたのですがお見かけしたことありますでしょうか?」
「いいえ。初めて見る顔です。ここは駅も近くて多くの方がご利用になられていますがこちらの女性は一度もお見かけしたことがないですね」
「そうですか…」
今村は自分の勘が外れていたことに落胆しながらも次のコンビニへと向かった。
だが、そこでも何の手掛かりも得ることはできなかった。
スーパーで聞き込みしても答えは結局おなじだった。
「おかしい。被害者はどうやって食料を手に入れていたのだ。
もしかして同棲相手がいたとか。それなら納得がいく」
同棲相手がいたのなら塚田さんが近隣から目撃情報を聞いてるかもしれない。
そう思い、一度電話してみた。
「なるほどな。そっちは空振りか」
「ええ。塚田さんはどうですか?」
「俺も変わらんが気になることが一つ。
部屋を借りたのは被害者ではなく中年の男性だったということが分かった。名前は
『岩谷 晃』。職業はフリーターだとさ」
「そのときに被害者も一緒にいたんですか?」
「いや。部屋を借りた時は岩谷一人だったそうだ。借りたのは三週間前。
それ以降、岩谷を見かけたことはないらしい。だから大家も被害者のことはまるで知らなかった」
「変ですね…」
ここまで被害者の生活していた痕跡が分からないなんてあるのだろうか。
それだけじゃない、被害者を見た人物もいなかったという不気味さに拍車を掛けている。
「ここからどう調べていきましょうか」
「まずは岩谷の線から当たっていこう。俺は情報共有のため一度署に戻る。お前も付いてこい」
「わかりました」
打つ手がない以上、今はそうするしかないということくらい今村にもわかった。
若き警察官は自分の未熟さを噛みしめざるをえない
それが己の若さ故なのかそういう風になっているのかはまだ誰も知らない。
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