第6幕 蠢きの夏

 美玖とアルバイトに張り切ろうと思った夏休み……美玖は部活を頑張りたいと言ったね。つい口論ケンカしてしまったけど、意見を押し通したばかりの僕が折れたよな。悔し紛れに美玖の分も僕が稼ぐと調子に乗ったっけ。


 それと、何故か女子部員だけの文芸部活動日が増えてたな。部長の独断かと思えば僕のせいだと言われたよ。


『佐久間がすぐにイチャつきたがるから』


 女子部員たちの怨嗟クレームだったらしい。美玖が好きだから――恨まないで欲しかったよ。



 そして初の女子活動日、青ざめた表情で帰宅した美玖は風呂へ駆け込んでたな。雨でも降った?――問いに答えず僕を寝室に引き込んだよな。それで美玖の見上げ顔オーラルを初めて知った。感激したよ。ただ発展がなくてさ。久々だったのに……


 それからは女子活動日の前夜に、同じようにしてくれたね。そのたび上手になってたよ。溜め込まなくて済んだけど、もっと触れ合いたかったな……


 もう一つの変化もあったね。美玖一人で寝室に籠ることも始めたんだ。その度こうの臭いとブツブツ言う声がしたよ。ちょっと怖かったな。ただ追い出された僕は、戸惑いより寂しさが募ってたよ。何の意味があったの?



 ともかく僕はアルバイトに精を出し、美玖はアルバイトそこそこで部活に懸命だった。その成果を見せて貰ったけど……褒め損ねた。やっぱりエッセイは敷居が高いと思うんだ……恋愛の機微は特に。男の浪漫じゃダメかな?



 お盆が過ぎて、部活は最後の全体活動日を迎えたんだ。男子の新入部がないから、相変わらず僕だけ場違いな気がしたよ。でももっと場違いな――いや場違いになった人物がいたよな。部長のことさ。


 黒縁眼鏡に三つ編みで色白――お盆前の部長は文芸少女のイメージ通りの外見だったよな。小麦色に焼けた金髪ギャルが部長と名乗ってさ。眼鏡はコンタクトになってたし。悪い冗談かと思ったよ。思わず美玖を見たけど、諦め顔で首を振ってたね。止められなかったの?


 私立高の男子が今彼と部長に聞かされて、強制で写真も見せられたしでさ。


いい男ハンサムでしょ?』


 笑顔で宣ってたけど、元副部長との差は……あの羽田野推しは何処へ行ったのかと不思議に思ったよ。


『彼氏とデートなの』


 写真を見せ終わって活動開始かと思いきや、色ボケ宣言して部長は部室を出て行ったな。唖然としてる間に、僕と美玖を置いて皆も出て行くしさ。女子部員たちは誰も彼もが、色ボケが伝染したような会話を交わしていて――文芸部の崩壊を感じ取れたんだ。

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