第3話

王子というのはどういう気分なのだろうか。生まれたときから何人もの召使いを従えて、国民全員から期待されて、生まれたときから将来の行き先を決められているのは、どういう気分なのだろうか。子どもというのはもっと自由であるべきと考えるのは不敬罪に当たるのだろうか。



そんなことを考えていると、城のバルコニーから王らしき人物が、王女と数人の側近と共に出てきた。その腕の中に赤ん坊を抱きかかえて。どうして赤ん坊というものはこうもかわいいのだろうか。よく姿は見えないが、パパに手を伸ばす仕草がとても愛らしい。…こんなことを考えていると、それこそ不敬罪に当たるかもしれない、と緩んだ顔を戻す。


当然王子のお披露目、つまる所赤ちゃん見せつけタイムなんて和やかなムードになるとばかり思っていたが、周りを見るとそうでもないらしい。良い顔をしない一人が怒号を飛ばす。

「赤髪の子は即刻処刑するべきだ!!」

それを皮切りに、悪魔の子だの不幸を呼ぶだの様々な言葉が飛び交う。そのうち僕の前にいた男がおもむろに石を拾った。投げつけるのだろう。ただ投げたところでかなり距離があるので、届くことはないだろうと傍観していた。


「エクス…」


やばい、それはやばい。思いっきり爆発魔法だ。石が届かないにしても大損害が出る。考えると同時に制圧に動いていた。まず口を塞ぐとか石を取り上げるとか、僕にできるのかとか、思考が止まらず心配も絶えないが、僕が止めなきゃ止める人はいない。

ただその心配は徒労に終わった。男の周りを炎が囲ったのだ。男は驚いて詠唱を辞めていた。僕はその状況を飲み込んだと同時に、隣に黒い甲冑を纏った衛兵がいることに気が付いた。おそらくこの人が炎を出したのだろう。大事にならなくて良かった。

ただ、さっきからずっと黒衛兵がこちらを見ている。何も悪いことはしてないはず…と考えるがその謎はすぐ解けた。遠くから別の衛兵が駆け寄ってくる。


「アテナ隊長ー!!」


僕は驚いて黒衛兵を見つめて声をかけた。

「テナ…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未題 @hmtbs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る