第7話

「家の娘がとんだことを、本当に申し訳ございません」

「・・・はぁ、いえ、その、なんと言いますか」

「親の私達から厳しく叱っておきますので、何卒今回はご容赦下さい」


 そう、今現在アカネさんはこの場にいないのだ。

 この男性、ヒカルさんと名乗った、方が連れて来た三人の大変怖そうな女性たちに何処かへと連れて行かれてしまったのである。

 遠くからずっとアカネさんの悲鳴が聴こえる気がするがきっと幻聴だろう。ザマミロ。

 それにしても、私みたいな子供相手に随分と丁寧に接してくれる人だなぁと思う。

 この人が、アカネさんのお父さん? 信じられない。お母さま方は納得の怖さであったけれど・・・


「もっと早く駆け付けるつもりだったのですが、何分細かな制限が付きまとっている身なものでして、いえ、あの娘を一時とはいえ放置してしまった私共の責任で御座います」

「あの、その、そんな言葉遣い辞めて下さい。私みたいな小娘が相手ですし、私もそれではかえって恐縮してしまいますから」

「・・・良いのかな?」

「はい」

「・・・ありがとう。優しいんだね。アサヒちゃんだったね。改めまして、アカネの父、ヒカルです」

「その、本当にお父さんなんですか? 失礼ですがまるで似ていませんけれど?」

「あの子は、見た目も性格も母親似でね、ここだけの話、正直かなり手を焼いているんだ、ボクも」

「解ります!」


 反射で同調してしまった私、恥ずかしい。そう、いやでもこれは間違いなくシンパシー。

 きっとあのお母さんなら遺伝子までも強いに違いないなどと誠に失礼な事を想像してこっそり胸の内で笑ってしまった。

 それにしてもこの人達、ちょっと若過ぎる気がするのだけど、これが良く言う年齢不詳というやつだろうか?


「失礼かもしれませんけど、おいくつですか?」

「この身体は・・・もう40になる、かな?」

「身体?」

「はははっ、まぁちょっと特殊なんだよ、ボク達は。もっともこのままだと君までボク達のようになってしまうけれど、本当に良いのかい? ゲームマスターに寿命なんてものはないよ?」

「え? そうなんですか!?」

「うん。しかもほとんどの人は君の事を忘れてしまうし、かなり孤独で、退屈な仕事という事だけは間違いないよ? それでも?」

「なります!」

「即答なんだね」

「決めてましたから」

「解った。それじゃあアカネ達が戻って来たら継承の儀式を行うよ、君のレベルはもうとっくに70だからね」

「・・・・・・・・・・・・え? ホントですか?」

「アカネの作る“地獄”は時間に縛られないからね。君はもう、大体一週間近くもの間、文字通り地獄を視たんだよ」

「あの、アカネさんを叱るって話、本当に厳重にお願いします!」

「はははっ! 了解」


 なんだかこの人の事は好きになれそうな気がする。何と言えばいいのか、邪悪な娘とは違って、凄く気持ちが良い笑い方をする人だ。

 私がこれまで見て来たどんな大人達とも違うような気がする。少し、本当に少しだけだけど、彼に興味が湧いてきた。


「あの! ヒカルさんって!」


 途端だった、私の全身の血の気が引いた。いつのまに戻って来たのか、アカネさんは鬼の形相で私に斬りかかろうとして、また、ヒカルさんに止められた。怖過ぎる!

 え? なんで?

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