第6話

「それじゃあ始めましょう!」

「やっぱりかああああああああ!!」


 憧れだったピカピカの衣装、光り輝くステッキ、どちらも紛れもなく最高ランクの装備。

 しつこいくらいにアカネさんに色々と質問しながら揃えた最強の装備である。

 スキルの獲得もちゃんと自分なりに納得のいくものを厳選出来たと思う。

 だがしかし、

 しかしである!

 アカネさんに連れて来られただだっ広い空間には私とアカネさんの二人きり、これが何を意味するのかと言えば!


「大丈夫、ここなら、いくら泣いても叫んでも、誰も助けに来ないから!」

「もはや悪意しか感じない!」


 ガタガタと震える身体とステッキ。私のここ何日かで無理矢理研ぎ澄まされた本能が告げている。今度こそ死ぬと!

 最強? だからどうした。最強が無敵に立ち向かえるものか! 今なら解る、前回までの試練など、コレに比べればただのお遊びでしかなかったのだと!

 夢にまで見ていた衣装が私の死装束になってしまうなんて!

 うわ、刀抜いたよ、この女!


「いやいやいやいやいやいや、そもそも私、魔法使いなんだってば、接近戦とか無理でして」

「魔術戦でも良いけど?」

「墓穴!? ホントに一体何者なんだアンタは!」


 私なりに精一杯時間を稼ぐつもりが、一言だけでタイムアウト、待ったなし!

 ダレカタスケテ。


 私、進藤 朝姫13歳、魔法使いに憧れる、何処にでもいる私立中学一年生。

 そこそこ裕福な家庭に生まれて、優しくも厳しい両親に育てられました。

 乙女座のA型。食べ物の好き嫌いはありません。アレルギーもありません。友達は沢山いますが、恋人はまだいません。

 将来の夢は幸せなお嫁さんです。

 弟が一人います。

 難関の中学受験を突破して御国中学に入学しました。吹奏楽部員です。担当楽器はトランペットです。

 ある日の登校中の事でした、青信号の横断歩道を渡っている時に、突然車が突っ込んできて・・・


 ・・・走馬灯です(涙)


「あ、気が付いた、まだまだ、ガンガン行くよ~」

「いっそ殺して!」


 私は今、あらゆる地獄を経験しています。アカネさんのプロデュースで。

 今更気づきました。ここまで状況が整っていたのですから、今度こそ、一人でコツコツと地道にレベル上げをするべきだったと。

 憧れの装備というプレゼントに絆されて、合計三度もアカネさんの後についていったのがそもそもの間違いだったのです。

 三度目ってとてもとても大切なんですね。実感です。何故敬語なのでしょうか? そもそも私は一体誰に話し掛けて・・・


「ハイ、ストップ」

「「!?」」


 それは全くの突然でした。私達二人以外誰もいなかった筈の空間に響いたその男性の声は、アカネさんの動きを完全に止めてしまったのです。

 黒いスーツに白いシャツ、黒いネクタイを身に着けた、それはそれは優しそうな大人の男の人でした。神様?

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