第20話
那由多の言葉で少し元気が戻った私は、また問題をねだった。
でも、
那由多が次の式を書く前に、
「那由多ー!終わったよー!」
駐車場から那由多のママの声が聞こえた。
私たちは手を繋いで家を出る。
これでお別れだ。
ゆっくり階段を降りてパパたちのところに行った。
引っ越し屋さんは先に出発して、もうトラックはいなかった。
那由多の家にあったものは、もう何にもなくなった。
また寂しさが込み上げてきて、目が熱い。
那由多のパパとママは、もういつでも出発できそうだったけど、急かさずに待っててくれた。
「なゆた、またね」
なんとか震えそうな口で言った。
またね、って。
「うん。れいちゃん、またね」
もう前が見えなくて、まだ繋がってる手をぎゅうっと握って俯いてた。
「那由多、行こう?」
那由多のパパが優しく言った。
「……うん」
手が離れる。
寂しい。
寂しい。
寂しい。
ちゅ。
ぼやけた視界の中で、突然の感触にびっくりして跳び跳ねた。
何かが口にくっついた。
温かい何か。
ママたちが何かキャーキャー言ってる。
「ぜったい、またね!」
那由多が初めて聞くくらい大きな声を出したので、私も大きな声で応えた。
「うん!」
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