第18話

会えるっていっても、今までと同じじゃないってわかってた。




意地悪なこと言ったって、わかってた。




那由多は、何にも言わずに立ち上がる。


珍しく怒ったのかと思って、慌てて私も立ち上がった。




那由多はまだ何も植わってないプランターの前にしゃがんで、私を呼んだ。




「たしざん、しよ」




土しか入ってないプランターを覗き込むようにして、手招きする。




私も隣にしゃがんだ。




「3たす4は?」




那由多が指で、土に式を書いた。




「7!」




私は答える。




「あたり」




土を撫でて、また新しい式を書く。




「5たす7は?」


「11?」




指をこっそり折って、ちょっと自信がなく答えると、那由多は首を傾げて唸る。




「うーん」


「あっ!12!12!」


「あたり」




やった、と喜びながら次の問題を急かした。




「8たす0は?」




答えは8。


すぐにわかった。




でも、答えじゃない言葉が勝手にこぼれてた。

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