第6話

彼らは流れがおかしいと騒いでいた。




いつもは激しく不規則な流れに囲まれている海域が、何故か穏やかで緩やかなそれになっている。


イヴが海鳥たちから聞いた話では、昨夜近くを通りすぎた嵐がいなくなってから、だんだんとそうなっていったらしかった。




もしかして、深海樹に何かあったのだろうか。




深海樹を守るように巡っていた潮がこうも力ない流れになってしまうなんて、ふたりには考えられなかった。


知恵を出しあっていろいろと推測するも答えは出ず、深海樹への心配は増すばかりだった。




嵐はたくさんの瓦礫を落としていったから、それが流れてきて深海樹に当たってしまったとか。


はたまた、良からぬものが楽園に入り込んで何らかの悪さを働いたのか。


それとも、想像もつかない異常事態が起きているのか。


悪い想像しかできないまま、次第に会話は少なくなって、沈黙が訪れた。




二人は不安げな表情を濃くしながら、沈み行く夕日を眺めた。


 


「もうすぐなのに、心配だね」




夕日が沈みきったところでラピスがぽつりと口にすると、イヴも小さな声でうんと頷いた。

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