第4話
途中、トビウオの群れと一緒に泳いだり、ホオジロザメの背鰭に掴まらせて貰ったりしながら目的地を目指す。
魚たちと会話を交わしながらもかなり急いだため、程なくして浅瀬についた。
水面から顔を出して岩場へ近づくと、一番平べったい岩の上に友の姿を見つけた。
「イヴ!」
名前を呼びながら急いで近づく。
「・・・ラピス、待ってた」
待ち合わせの相手であるイヴは特に怒るでもなく、人魚の少女、ラピスを出迎えた。
イヴの声はとても小さい。
しかも言葉も少ないから、あんまり聞くことはできなかった。
せっかく綺麗な声なのに勿体ないと、ラピスは思う。
どんな音よりも美しいイヴの声は、普通に会話をしていてもうっとりしてしまう程だった。
たまにリクエストすれば、イヴは喜んで歌を歌ってくれるけれど、その歌声は普段のそれとは比べ物にならないくらいに綺麗で、聴いているだけでいつも笑顔になったり涙が零れたりする。
空や海中までも響き渡る歌声に、みんな魂を揺さぶられた。
時折、偶然イヴの歌声を聞いた人間の船が沈むこともあった。
きっと、あまりの美声に魂を抜かれたのだと、ラピスは確信していた。
声以外も、イヴは美しかった。
その姿は、よく見かけるどの海鳥たちとも違う色鮮やかな羽毛に包まれていた。
羽毛のない頭のまわりは、赤から黄色にグラデーションのかかった髪が海風に揺れていて、まるで虹のように見える。
ふんわりと編み込み纏められたそれは、いつもラピスが編んでいた。
イヴには腕がなく、その代わりに島の木々のような鮮やかな色の翼を持っていたので、それはいつしかラピスの役目になっていた。
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