第105話

うちのはす向かい、海岸へ抜ける小道の角にあるポストの前に、君はいた。




ついに明日が今日になってしまった。




私は緊張と動揺をひた隠しにしながら、玄関の鍵をゆっくり閉めた。




戸締まりが終わってそちらへ歩み寄ると、男のくせに細くて綺麗な指にたばこが挟んであるのが見えた。


たばこ吸うひとなんだ。




君は私に気が付くと、さりげなく携帯灰皿を取り出して手早く火を消した。




「お待たせ」


「うん」




まだ昼間みたいに明るいけど、だいぶ涼しくなって気持ちが良い。


ふたり並んで、日課の散歩のようにのんびりと歩いた。




なんだか変な感じだけど、これはちょっと嬉しいかも。


海の方へ行く君にしたがってついていくだけなのに、幸せを感じるなんて。




私ってなんて安上がりなんだろうと少し笑えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る