第35話

ふわりと漂うのはアールグレイの香り。




……。


ああ、いい香り。




深く芳醇な独特のそれは、思い出せなかった心のもやもやをそっと消してくれた気がした。




私は深く呼吸を繰り返しながら、上機嫌にそれを瓶に詰めていく。




そこへ、ドアのベルが鳴った。


お客さんだ。




「いらっしゃいませ」




笑顔で迎え入れると、同じように笑顔で挨拶が返ってきた。




「こんにちは」




私はそのお客さんがいつもと同じ窓辺の一番明るい席に座るのを待ってから、声をかけた。




「畠さん今日は何にしますか?」

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