第20話

「いらっしゃいませ」




タオルで手を拭きながら顔を向ける。


ゆっくり開いた木製のドアから、すっとスーツの男のひとが入ってきた。




見たことのない顔。


初めてのお客さんみたいだった。




長身の均整のとれた身体にライトグレーのスーツがよく似合ってる。




「お好きなお席へどうぞ」




私が声を掛けると、そのお客さんは狭い店内をちらっと見渡して、カウンターの内側に立つ私の真正面の席に座った。




そして、メニューも見ずに一言。




「コーヒー」




あ。




……たまにあるんだよね、この注文。


申し訳ないけど、うちにそのメニューはない。





「すみません、うち紅茶だけなんです」




だから私はそう応えた。

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