第32話

眉間に皺を寄せて目をまんまるくしたその表情は、今までに見たことがない。


やばい、ちょっとおもしろい。




「お前一人なのか?」


「そうですけど」




そう答えると、今度は大きな溜め息を吐かれた。


なんだよ、さっきから。




「…佐久間」


「なんすか」


「陸上部は作れんぞ」


「え!?」




なんで!?




「部員が3人以上で部活だ」


「マジで!?」


「まじだ」




そんな…


じゃあ、先生に顧問になってもらったって意味なかったのか。




なんてことだ。


俺は目に見えて落ち込んでいた。




「まぁ、陸上部でなくてもいいのか」




項垂れた俺の耳に聞こえたのはそんな言葉。




嫌だよ。


他の部活じゃ、嫌なんだ。




そんなこと言わないで欲しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る