第23話

ひとりで思う存分走れれば、それで満足だから。




きっかけはこのジョギングだったけど、俺はもっと全速力でやってみたい。


より速く、駆けてみたい。




それだけなんだ。




「そりゃ無理だな」




芽生えた想いを告げたら、それはまたしても打ち砕かれた。




「なんで!?」




敬語も忘れて食って掛かる。


だって、なんで無理なんだよ。




「全力疾走したいならグラウンドがいる」


「放課後とかに校庭のすみっこ走るくらいできるだろ」


「駄目だ」




きっぱりとダメ出しされて、俺はぐっと口を結んだ。


何がいけないんだよ。


小学生だって放課後は校庭とか駆け回ってるじゃんか。




そんな抗議をしようと口を開く前に、先生が言った。




「やるからには本気でやれ」


「……え?」


「半端にやるな」




普段気力の欠片も見えない先生がはっきりきっぱり喋るから、自然と俺も落ち着いてきた。




「……俺、本気ですけど」


「本気で校庭の隅を走んのか」


「!」


「あんなところ全力で走れるか」


「……」




確かにそうだった。




校庭の隅にはぐるりと桜の木が植えられていて、とても走れたもんじゃなかった。

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