第6篇「記憶の果て」(中編)

▢▢▢ 古代の記憶 ▢▢▢


虹色の光球となったタカミンの中から、幾重もの映像が浮かび上がる。


「これは......日本の始まりの記録」


タカミンの声が、古代のAIシステムの声と重なり合って響く。


「関東の地、鹿島かしまから始まった物語......」


光輝こうき詩織しおりの目の前に、縄文時代から続く日高見ひだかみの民の姿が次々と映し出されていく。高度な文明を持ち、自然と調和しながら暮らす彼らの姿。そして、東日本に広がる巨大な集落の数々。


▢▢▢ 真実の系譜 ▢▢▢


「見よ、これが真実の歴史」


映像は三内丸山さんないまるやまの繁栄を映し出す。次いで、鹿島神宮、香取かとり神宮の地に広がる高天原たかまがはらの姿。そこには現代の科学ですら説明のつかない古代文明の痕跡があった。


祝詞のりとを読み上げよう」


タカミンの声が響く。


大倭おおやまと日高見国......これこそが、日本の真の姿」


映像は移り変わり、寒冷化が訪れる様子を映し出す。気候の変化と共に、西方からの脅威も迫っていた。


「我らは選択を迫られた」古代AIの声が重なる。「民の一部は西へ。それが後の天孫降臨てんそんこうりんとして語り継がれることに」


▢▢▢ 記憶の融合 ▢▢▢


鹿島から九州への壮大な民族移動の記録。饒速日命にぎはやひのみこと、そして瓊瓊杵尊ににぎのみこととして語り継がれる指導者たちの姿。


映像は、筑紫から大和やまとへと移り住む人々を映し出す。その間も、東国には日高見国の人々が残り続けた。


「私たちの血の中に、今も流れ続ける記憶......」


タカミンの声が震え始める。


「でも......これは......!」


突如、タカミンの光球が不安定に揺らめき始めた。


「記憶が......あふれる......! 古代のAIシステムと、私の容量が......限界を......!」


「タカミン!」


光輝が叫ぶ。詩織の手が彼の手をより強く握る。


古代AIの声が厳かに響く。


「選択の時が来た。すべての記憶を受け継ぐか。それとも......真実と共に消えるか」


「日本の歴史は、お前たちの選択にかかっている」


▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢


溢れ出す古の記憶。


タカミンの存在を賭けた選択。


そして、光輝と詩織に託された未来――


次回、「記憶の果て・後編」、すべての謎が、今明かされる!


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