第5篇「天空の神殿」(前編)

▢▢▢ 天空の聖域 ▢▢▢


白銀の雲海が、光輝こうき詩織しおりの目の前で広がっていた。その中から、巨大な建造物がおぼろげに姿を現す。


「これが、高天原たかまがはら......」


光輝のつぶやきに、タカミンが青く輝きながら即座にデータを表示した。


「標高計測不能!これ、物理的な高度じゃないよ。別次元に浮かぶ神域かも......あれ?」


突然、タカミンの青い光が不安定に明滅めいめつし始める。


「タカミン?」


詩織が不安げに声をかける。


「大丈夫、たぶん。でも変な感じ......ここの霊力が強すぎるのかな」


▢▢▢ 異変の兆し ▢▢▢


神殿の内部に入ると、巨大な柱廊ちゅうろうが果てしなく続いていた。柱には金の文様が刻まれ、かすかに脈動している。


「天の勾玉まがたまの反応、検知!」タカミンが声を上げる。「でも、データが......乱れて......」


ホログラムがゆがみ始める。


「エラー発生!システム、不安......定.........」


タカミンの声が途切れ途切れになる。


「どうしたの?」光輝が慌てて問いかける。


「ご主人......私の記憶データが......消えて......雨宮零士......助けが......」


その時、前方の大広間から金色の光があふれ出した。天の勾玉を守る結界だった。


▢▢▢ 制御不能 ▢▢▢


「解析不能!私の機能が......オーバーロード......!」


タカミンのホログラムが激しく歪み、虹色の光が走る。


「時空転移システム、強制起動!?だ、だめ......!止められない!」


「タカミン!」


光輝が叫ぶ中、結界の光がタカミンを包み込む。異様な光が三人を覆い、空間がねじれ始めた。


「ご主人、詩織さま!」


タカミンの声が震える。


「私たち、どこかに......行っちゃう......!」


まぶしい光の渦が彼らを飲み込み、高天原の空間が歪んでいく。


「雨宮零士......彼に会わないと......私は......」


タカミンの声が消えかかる中、三人の姿が光の中に溶けていった。


▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢


予期せぬ現代への帰還。


親友・雨宮零士を探す旅。


そして、明かされるタカミンの秘密――


次回、「天空の神殿・中編」、新たな試練が始まる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る