第4篇「古の盟約」(中編)

▢▢▢ 囚われの身 ▢▢▢


つちの民の洞窟の奥で、詩織しおりは縛られた手首の痛みをこらえていた。朝からずっと、目隠しをされたままだった。


「まだ目隠しが必要ですか?」


詩織の声に、洞窟の中で木のつえを突く音が響いた。


「もうよい。外してやれ」


深い声と共に、黒土で顔を塗った若者が近寄り、詩織の目隠しを解いた。


目の前には白髪の老人が立っていた。全身に赤い渦巻模様を描いた、土の民の首長しゅちょう朱守あかもりだった。


「歓迎するぞ、未来からの客人よ」


▢▢▢ 三つの力 ▢▢▢


一方の三内丸山さんないまるやまでは、光輝こうきがタエから土器作りを学んでいた。時折、空を見上げては詩織のことを案じる。


タエは土器を削る手を止め、光輝の腰に下げられた黒曜石こくようせきの矢を見つめた。


常世とこよの森で手に入れた矢......その力も必要なのです」


「この矢が?」


光輝は黒曜石の矢を取り出した。その漆黒の表面が、不思議な輝きを放っている。


「三つの力が必要なのです」タエは静かに告げた。「大地の鼓動を映す輪環りんかん、太陽の力を宿す火焔かえんの鏡、そして天空の導きを示す黒曜石の矢。この三つが揃って、初めて古の方陣ほうじんは完成する」


タカミンが青く光りながら解析を始める。


「なるほど!三つのアイテムの波長が共鳴してる。これは間違いなく同じエネルギーパターン!」


▢▢▢ 土の民の真意 ▢▢▢


朱守は詩織を広間へと案内した。壁一面に、天体の運行を示す精緻な図が描かれている。


「我々は見たのだ。大地が怒り、波が陸をみ込む未来を」


詩織は息を呑んだ。壁画の最後には、巨大な津波つなみが描かれていた。


「古の方陣があれば、その災いを防ぐことができる。だから、お前たちの力が必要なのだ」


その時、洞窟が大きく揺れ始めた。地下深くから、うなるような音が響いてくる。


「始まってしまったか......」


朱守の声が不吉に響く。


タカミンが光輝の耳に緊急の警告を送る。


「これは予測を超えた地殻変動の前触れ!全域に影響が出るよ!」


タエは土器を握る手に力を込めた。


「輪環を完成させねば、すべてが終わってしまう。光輝さま、お手伝いください」


▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢


迫り来る大地の怒り。


タエと光輝の土器作り。


そして、詩織が見出した土の民の真意――


次回、「古の盟約・後編」、運命の時が訪れる!

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