第3篇「常世の森」(後編)

▢▢▢ 天空の警鐘 ▢▢▢


天体観測所の揺れが激しさを増す中、黒曜石こくようせきの矢が不思議な輝きを放った。


「地殻変動の予兆!」タカミンの声が震える。

「このままじゃ、日高見ひたかみの国が......」


光輝こうき詩織しおりと顔を見合わせ、静かにうなずいた。


「七つの矢を集める時間はありません」サクヤが決意を秘めた表情で言う。「だが、方法はある」


▢▢▢ 星々の導き ▢▢▢


サクヤは常世とこよの衛士たちを円陣に配置した。


「我らの持つ矢の力を、一つに」


六人の戦士が、それぞれ漆黒しっこくの矢を掲げる。


「これが最後の儀式になるやもしれぬ」


光輝が火焔かえんの鏡を掲げ、詩織が羅針盤を手に取る。


タカミンが青く波打ちながらデータを解析していく。


「エネルギー反応が急上昇中!これは、まるで星々のパワーを集約してるみたい!」


▢▢▢ 未来への祈り ▢▢▢


六本の矢から放たれた光が、中央の黒曜石の矢へと収束していく。


「我らが守ってきた力を」


サクヤの声が響く。


「未来を守る光となれ!」


その瞬間、天体観測所の天窓から、巨大な光の柱が天空へと伸びていった。


「驚異的なエネルギー!」タカミンが興奮して舞い上がる。「大気の流れが変わり始めてる!」


▢▢▢ 新たな夜明け ▢▢▢


光の柱は次第に消えていき、空には穏やかな星空が広がっていた。


「気候変動の危機は......去ったのですね」詩織が安堵あんどの表情を浮かべる。


サクヤは静かに頷く。


「だが、これは始まりに過ぎない」


彼女は一本の矢を光輝に差し出した。


「この矢には、我らの記憶が封じられている。未来にて、必要な時が来るだろう」


光輝は神妙な面持ちでそれを受け取る。


「この力を、正しく使わせていただきます」


▢▢▢ 別れの時 ▢▢▢


夜明けの光が差し込み始めた天体観測所で、サクヤは最後の言葉を告げる。


「次なる導きの地は、青森あおもりの地にある」


その時、黒曜石の矢がかすかに震え、特別な波動を放った。タカミンの姿が青く明滅めいめつする。


「この波動......!」


タカミンが矢の解析を始める。


三内丸山さんないまるやま!そこにある『なわ輪環りんかん』と共鳴してる!同じ星の力を持つ遺物からの反応だよ!」


光輝と詩織は常世の戦士たちに深々と頭を下げた。


時空のゆがみが彼らを包み込み始める中、サクヤの声が響く。


「さらば、未来の旅人よ。我らの思いを、その先へ」


▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢


光輝たちの前に広がる縄文の世界。


大地の記憶が導く、新たなる謎。


そして、予期せぬ出会いが彼らを待つ――


次回、第4篇「古の盟約」開幕!

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